就活初期にできるだけ幅広い業界・業種を理解するために、業界研究コンテンツを作りました。何故それが大事かに関しては以下の記事を参考にしてください。
- 航空会社のビジネスモデルを理解しよう
- 航空業界の現状と課題・未来
- 航空会社にはどんな仕事があるのか、職種の情報
- 航空業界に働く人のモチベ―ションは何か
- 航空業界に向く人、向かない人はどんな人か
- 航空業界の構造と国内航空会社
Contents
航空業界の構造
国内の航空業界の構造は、ANA(全日空)と日本航空の2社が断トツのシェアを握っている寡占市場です。
それ以外は日本航空のグループで一部地方路線を運航する航空会社、ANAやJALが出資しているLCC、独立系LCC(一部資本関係あり)、外資が日本で設立したLCC、貨物専業航空会社が主要な企業群という事になります。
全日空と日本航空の2社で日本国内線ルートの定期便の約75%を運航し、それぞれの出資しているグループ会社を含めると、そのシェアは95%に達します。
日本の航空会社の国際線も含めた全事業の売上高シェアではANAホールディングスが5割強、日本航空が約4割で、2社を併せると9割を超えるシェアを握っています。
従ってこの2社の経営戦略が、傘下のグループ会社にも大きな影響を与えます。この2社を中心に参加の会社、それ以外の会社の構造を解説していきます。
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ANAホールディングス
ANAホールディングスは、2012年に全日本空輸会社全から持株会社への変更に伴い、グループ全体のマネージメントを行う会社として設立されました。
傘下に航空運送事業会社として全日本空輸株式会社、グループLCC会社や航空事業に関連する整備、空港支援、サービス、セールス&マーケティング、商社、貨物・物流、人材・養成等々のグループ会社を持つ構造になっています。
- 事業内容 :グループの経営戦略策定、経営管理及びそれに付帯する業務
- 資本金: 467,619百万円
- 連結売上高:1,707,484百万円 (2023年3月期連結決算)
- 従業員数 :253名(ANAホールディングス)
- 連結従業員数:40,507名(2023年3月31日現在)
ANAホールディングスの業績
2023年3月期連結決算 (2022年度)
航空業界は2020年2月から蔓延が拡大した新型コロナウイルスの影響が甚大であるため、2023年3月期(2022年4月1日から2023年3月31日の業績)を過去3年度と比較できるように表示しています。
- 新型コロナウイルス感染症拡大の影響が軽微であった2020年3月期(2019年4月1日から2020年3月31日の業績)
- 甚大な悪影響を受けた2021年3月期(2020年4月1日から2021年3月31日の業績)
- 及び前期である2022年月期(2021年4月1日から2022年3月31日)
2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | |
売上高 (百万円) | 1,974,216 | 728,683 | 1,020,324 | 1,707,484 |
経常利益/経常損失 (百万円) | 59,358 | -451,355 | -184,935 | 111,810 |
親会社株主に帰属する当期純利益/当期純損失(百万円) | 27,655 | -404,624 | -143,628 | 89,477 |
包括利益(百万円) | -14,742 | -353,235 | -93,764 | 63,236 |
従業員数(人) | 45,849 | 46,580 | 42,196 | 40,507 |
外、平均臨時雇用者数 | 3,559 | 3,027 | 2,025 | 2287 |
連結子会社 | 128社 | 125社 | 55社 | 54社 |
持分法適用子会社・関連会社 | 14社 | 13社 | ||
非連結子会社 | 78社 | 78社 | ||
持分法非適用関連会社 | 45社 | 42社 | 28社 | 25社 |
尚、2022年3月期の事業セグメント別業績の概要は以下の通りです。
事業セグメント別業績概要
事業名 | 外部顧客売上(百万円) | 売上構成比 | セグメント利益/損失 (百万円) |
利益構成比 |
航空事業 | 1,498,327 | 87.8% | 124,158 | 95.3% |
航空関連事業 | 45,723 | 2.7% | 2,332 | 1.8% |
旅行事業 | 57,743 | 3.4% | -277 | -0.2% |
商社事業 | 90,602 | 5.3% | 3,511 | 2.7% |
その他 | 15,089 | 0.9% | 599 | 0.5% |
合計 | 1,707,484 | 100.0% | 130,323 | 100.0% |
セグメント間取引等、調整・消去 | ー | ー | -10,293 | ー |
計上額 | 1,707,484 | ー | 120,030 | ー |
新型コロナウイルスの影響
航空会社は、全世界的に厳しい行動制限・移動の制限が実施された2020年から2022年は非常に厳しい経営環境課下にありました。
航空会社各社は、各国の入国規制や外出自粛等により人の移動が激減したのみならず、ホテル等の観光関連ビジネスや個人消費の落ち込みにより甚大な影響受けてしまいました。
2022年に入り、日本も含めて行動制限が緩和され、航空需要も復活がみられるようになり、ANAの業績も大幅に改善し、2023年月期の決算では、過去2期の赤字から脱却して、黒字の決算となりました。
象徴的にANAホールディングスの国際線と国内線の旅客数を4期分で比較してみると以下のような推移となります。
ANAブランド 輸送実績
2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | |
2019/4/1~2020/3/31 | 2020/4/1~2021/3/31 | 2021/4/1~2022/3/31 | 2022/4/1~2023/3/31 | |
国際線旅客数 (人) | 9,416,415 | 427,392 | 825,524 | 4,212,581 |
国内線旅客数 (人) | 42,916,334 | 12,660,650 | 17,959,225 | 34,534,798 |
2023年3月期(2022年度)のANAブランドの旅客数は、コロナの影響が軽微であった2020年3月期(2019年度)に比較すると、国内線で80.47%まで戻り、国際線では44.74%という状況でした。
国際線は前年の2022年3月期の乗客数に比較して約5倍増になっていますが、コロナ前の乗客数には未だ程遠いことが分かると思います。
2023年度に入り、国際線の乗客数も急速に回復しているので、航空会社を志望する方は4半期ごとの回復の経過をモニターしていきましょう。
2023年3月期(2022年度)連結業績の概要
2023年3月期のANAホールディングスの連結業績は、売上高が1兆7,074億円(前期比67.3%増)の増収でした。
営業費用は1兆5,874億円(前期比33.0%増)となり、利益面の業績としては、営業利益が1,200億円(前期 営業損失1,731億円)、経常利益は1,118億円(前期 経常損失1,849億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は894億円(前期 親会社株主に帰属する当期純損失1,436億円)となり、3期ぶりに黒字化を達成した年度となっています。
ANAの中長期計画
ANAは、ANAグループの使命・存在意義である経営理念として「安心と信頼を基礎に、世界をつなぐ心の翼で夢にあふれる未来に貢献します」を掲げています。
経営の基盤である安全を堅持しつつ、「世界中のグループ社員がイキイキと挑戦を続け、お客様や社会に寄り添いながら新たな価値を提供し、世界を期待や喜びで満たしたい」という想いを込め、2023年2月15日にグループ経営ビジョンを「ワクワクで満たされる世界を」に刷新しています。
現在ANAグループは、2023年2月15日に策定した「2023~2025年度 ANAグループ中期経営戦略」に基づき、新しい経営ビジョンである「ワクワクで満たされる世界を」の実現に向けて事業を展開しています。
「2023~2025年度 ANAグループ中期経営戦略」
「2023~2025年度 ANAグループ中期経営戦略」の期間は、「2030年に目指す姿の実現に向けた変革」を進める3年間と位置付けであり、コロナ禍からの回復を果たし、持続的な価値成長に向けたビジネスモデルの変革を加速して成長軌道への転換を図る方針となっています。
中期経営計画における3つの戦略の柱
- マルチブランドの最適化と貨物事業の拡大による航空事業の利益最大化
- ANA、Peach、AirJapanの3つのブランドで最適なポートフォリオを追求
- 違いに応じて役割を分担し、航空需要の変化に合わせて収益性を高め、併せてマーケティング連携・ブランド間の回遊性向上、協業・機能集約を進めることで、市場シェアと収益の拡大を目指す
- 事業分業に応じたリソース配分による航空比連動の収益ドメインの拡大
- 社会の変化に応じた新たな事業の創出と更なる安定した経営に繋げるため、非航空事業における事業分類に応じた適切な経営資源配分により、収益拡大を目指す
- 航空事業とは一線を画した運営体制の導入、人財育成など、事業拡大を支える仕組みを整備
- グループの持続的成長に向けたANA経済圏の拡大
- 「マイルで生活できる世界」を実現し、ANA経済圏の早期拡大を目指す
- ANAマイレージクラブアプリを中核に置き、「ANA Mall」や「ANA Pay」等のコンテンツ・決済手段を拡充させるとともに、データ活用を進めることで顧客の回遊を促し、ANA経済圏内のサービス・商品の利用を促進
- コンテンツの魅力度向上
- 非日常・日常の相互回遊
- 「マイルで生活できる世界」を実現し、ANA経済圏の早期拡大を目指す
貨物事業の拡大に関しては、日本郵船株式会社との間で、日本郵船株式会社が保有する日本貨物航空株式会社の株式全てを取得することにより、ANAホールディングスの子会社化することに関し、2023年3月7日に基本合意書を締結しています。2023年10月には日本郵船が保有する全株式を取得して、その後は事業の統合を目指す計画です。
貨物事業の拡大を持続的成長の重要な手段として位置付け、中核事業であるエアライン事業の利益最大化に向けて取り組んでいく方針です。
ANAの新卒採用動向
就活生に直接関係のあるANAグループの2022年卒の新卒採用は、一部の職種(パイロット、障がい者、一等整備士養成プログ対象者)に限定し、採用人数も大幅に絞って行われました。
2023年卒の新卒採用を再開し、2024年卒では客室乗務員の募集も再開し、積極採用に舵を切っています。
インバウンド・アウトバウンド需要の復活を見越して、全体的に積極採用を行う方針ですが、航空業界、とくにANAやJALグループへの人気は高く、厳選採用であることから、への就活は非常に狭き門であることには変わりはありません。
*ANA参加のLCC及びグループの航空会社でも、客室乗務員の採用を再開している企業はあります。詳しくは、傘下の各航空会社の採用情報で確認してください。
自分の就活の軸を良く考えて、自分の特徴が活かせる複数の業界へのアプローチを併せてしておきましょう。
ANAのLCC事業
以下は就活生の皆さんにとって興味深い、ANA傘下のLCCに関して概要を説明します。
コロナ以前では航空会社の成長戦略の一翼を担っていたLCC事業ですが、その状況は一変してしまいました。
LCCのビジネスモデルは、シートピッチを縮めてFSC便よりは、「密」の状態で効率を上げ、その分航空運賃を格安で提供するものです。
またLCCは観光需要に依存している割合が高く、二つの意味で新型コロナウイルスの悪影響を受けやすいモデルとなってしまいました。
LCCへの就活はFSCへの就活よりさらに厳しい状況でした。
コロナ禍にあって日本事業を撤退したLCCや撤退はしなくても路線を大幅に減らす、運休している路線が多くみられました。
2023年度に入り、ようやく国際線の観光需要が復活してきたことによって、運航路線を再開、あるいは新路線への就航を目指す航空会社もあるため、その動向を注視しておいてください。
ANA傘下のLCC及びグループ航空会社
- 株式会社エアージャパンは、アジア・リゾート路線を担うANAホールディングス株式会社100%出資の会社
- 国際線旅客便と沖縄ハブを中心にアジア各都市(中国主要都市、香港、台北、ベトナム、タイ、ミャンマー、シンガポール)を結ぶ貨物便を運航
- 2023年より『AirJapan』を新たなブランドとして運航、サービスを開始
- 2024年2月9日より成田⇔バンコク線を運航予定
- 従業員数:903名(2023年6月1日時点)
- Peachは2012年3月に就航した、全く新しい概念の航空会社で「空飛ぶ電車」をコンセプトに国内線16線と日本とアジアの主要都市を結ぶ国際線15路線を展開していました。(国際線はコロナ禍で運休となっていましたが、2023年8月1日現在では、国内線18路線、国際線12路線を運航)
- 目指しているのは「アジアのかけ橋」であり、手軽な航空運賃で誰もが気軽に移動できること、「ヒト・モノ・コトの交流を深めるアジアのかけ橋となり、人間愛を育むエアラインとなる」が企業理念です。
- Peachの本社は大関西国際空港にあり、ANAホールディングスはPeachの77.9%の株主です。ANAのLCC成長戦略の上で重要なポジションを担っています。
- Peachはバニラエアーを経営統合して路線を引き継ぎ、国内、アジア路線を中心とした拡大したLCCとしてANAホールディングスの中で重要な役割を担っています。
- 従業員数:1878名(2022年6月1日現在)
- 2010年10月に(株)エアーニッポンネットワーク、エアーネクスト(株)ならびにエアーセントラル(株)の3社が統合し、ANAウイングス株式会社となり、小型機であるボンバルディアHC8-Q400、B737-700/800を使用して日本国内の約45空港間、76路線を運航している会社(2023年4月1日現在)
- ANAグループ国内線の約4割を運航
- 従業員数:1,889名(2023年4月1日現在)
ANAが出資している他の航空会社
- 福岡県北九州に本社を持つ国内線航空会社です。
- 既存の航空会社にはない新しい航空輸送サービスをお客様、社会に提供する目的で設立された航空会社で、真っ黒な機体でご存知の方も多いでしょう。
- 東京(羽田)⇔北九州、東京(羽田)⇔福岡、東京(羽田)⇔大阪(関西)、名古屋(中部)⇔福岡、東京(羽田)⇔山口宇部、北九州⇔沖縄(那覇)線(運休中)を運航しているLCCです。
- また2018年10月より北九州⇔台北、名古屋(中部)⇔台北の国際線にも進出しています。
- LCCとしては座席も広めでドリンクサービスも無料でクオリティが高いところが人気です。顧客満足度ランキングでも1位を獲得するなど人気が高いエアラインとして定評があります。
- ANAとはコードシェア(共同運航)を行っており、ANAから予約するとANAのマイルを貯められることも人気です。ANAとは業務提携関係にあり、株式の14.67%の出資も受け入れています。
- 従業員数:710名(2023年3月31日現在)
- 札幌に本社を持つ、1996年に設立された北海道オリジンの航空会社です。経営の失敗で2002年6月債務超過に陥り自立再建を断念して身に再生手続きを申請しました。
- ANAが再生スポンサーとして名乗りを上げ、2003年2月1日より整備・販売システム提供を支援するなど包括提携契約を結んで支援した結果、当初2006年までの予定だった民事再生計画を1年前倒し、2005年3月に再生を終了しています。ANAは筆頭株主ではないですが、実質的には影響力を持っています。現在は北海道内6都市と本州の5都市を11路線で運航しています。
- 尚、株式会社AIRDOと株式会社ソラシドエア(本社:宮崎市)は、2021年5月28日に開催された各社の取締役会において、両社にて共同持株会社設立に関する「基本合意書」を締結し、2022年10月3日に経営統合しています
- 共同持株会社の概要
- 名称:株式会社 リージョナルプラスウイングス(英文名称 RegionalPlus Wings Corp.)
- 本社所在地:東京都大田区
- 株式会社AIRDOは存続事業会社として、共同持ち株会社の参加に入る予定
- AIR DOとSolaseed Airのそれぞれのブランドは維持されています
- ANAホールディングスはリージョナルプラスウイングスの発行済株式の15.31%を所有する第二位の株主
- 宮崎県宮崎市が本社の航空会社です。
- 2002年8月に東京 – 宮崎線に新規参入し、那覇 – 鹿児島線、那覇 – 長崎線などを展開していましたが経営が上手く行かず、2004年6月より、産業再生機構の経営支援を受け、全日本空輸が第2位の株主となって業務提携、支援を行いました。その後2006年には再建のめどが立ち、2022年3月時点では、ANAホールディングスが17.01%の株主でした。
- 東京、名古屋、神戸と九州主要都市、沖縄を結ぶ路線を運航、全便がANAとの共同運航となっています。
- 尚、株式会社ソラシドエアと株式会社AIRDO(本社:札幌市)は、2021年5月28日に開催された各社の取締役会において、両社にて共同持株会社設立に関する「基本合意書」を締結しています。(2022年10月3日に経営統合済)
- 共同持株会社の概要
- 名称:株式会社 リージョナルプラスウイングス(英文名称 RegionalPlus Wings Corp.)
- 本社所在地:東京都大田区
- 株式会社ソラシドエアは存続事業会社として、共同持ち株会社の参加の連結子会社
- ANAホールディングスはリージョナルプラスウイングスの発行済株式の15.31%を所有する第二位の株主
尚ANAホールディングは、2023年3月7日、日本郵船の子会社で、航空貨物事業を行っている、日本貨物航空(NCA)を買収することを発表しています。2023年10月には日本郵船が保有する全株式を取得して、その後は事業の統合を目指す計画です。
日本航空株式会社
日本航空株式会社( Japan Airlines Co., Ltd.)
- 事業内容:定期航空運送事業及び不定期航空運送事業、航空機使用事業、その他附帯する又は関連する一切の事業
- 資本金および資本準備金:546,831百万円 *百万円未満切り捨て
- 連結売上高: 1,375,589百万円 *百万円未満切り捨て
- 従業員数 : 12,969人 (2023年3月現在)
- 連結従業員数 : 36,039人 (2023年3月現在)
事業としては、航空運送、グランドハンドリング、空港旅客サービス、整備、貨物、機内食、空港周辺事業、燃料、旅客(ツアー)販売、マイレージ、不動産・建設、文化・教育・人材、商事・流通、金融・カード、情報、その他(梱包・発送)領域をカバーしています。
日本航空の事業セグメントは航空運送事業とその他の2つで構成されています。航空運送事業は以下の事業で構成されています。
- 日本航空及び航空子会社による航空運送事業
- 空港旅客サービス
- グランドハンドリング
- 整備
- 貨物
- 旅客販売
- マイレージ
- 空港周辺事業
その他事業は、航空運送を利用した旅行の企画販売、航空座席の販売、手荷物宅配、システム開発・運用、旅行業向け予約発券システムの提供、クレジットカード事業等が含まれます。
日本航空の業績
2023年3月期連結決算(2022年度)
航空業界は2020年2月から蔓延が拡大した新型コロナウイルスの影響が甚大であるため、2023年3月期(2022年4月1日から2023年3月31日の業績)を過去3年度と比較できるように表示しています。
- 新型コロナウイルス感染症拡大の影響が軽微であった2020年3月期(2019年4月1日から2020年3月31日の業績)
- 甚大な悪影響を受けた2021年3月期(2020年4月1日から2021年3月31日の業績)
- 及び前期である2022年月期(2021年4月1日から2022年3月31日)
2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | |
売上高 (百万円) | 1,385,914 | 481,225 | 682,713 | 1,375,589 |
財務・法人所得税前利益/損失 (百万円) | 88,807 | -398,306 | -239,498 | 64,563 |
親会社株主に帰属する当期利益/当期損失(百万円) | 48,057 | -286,693 | -177,551 | 34,423 |
当期包括利益(百万円) | 34,298 | -251,179 | -149,054 | 18,257 |
従業員数(人) | 35,653 | 36,060 | 35,423 | 36,039 |
外、平均臨時雇用者数 | 1,144 | 815 | 663 | 856 |
子会社 | 81社 | 79社 | 144社 | 137社 |
関連会社 | 55社 | 51社 | 54社 | 53社 |
2023年3月期(2022年度)連結業績の概要
2023年3月期(2022年度)における日本航空の連結業績は、売上収益が1兆3,755億円(前年同期比101.5%増加)となり前年度との比較では倍増となりました。
営業費用は1兆3,446億円(前年同期比43.0%増加)となり、利益面では財務・法人所得税前利益*(△は損失)は645億円(前年同期は△2,394億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益(△は損失)は344億円(前年同期は△1,775億円)となり、三期ぶりでの黒字を達成しています。
*日本航空は、当期利益から法人所得税費用、利息およびその他の財務収益・費用を除いた「財務・法人所得税前利益」をEBITと定義
尚、2023年3月期の事業セグメント別業績の概要は以下の通りです。
2023年3月期の事業セグメント別業績概要
事業名 | 外部収益(百万円) | 売上構成比 | 投資・財務・法人所得税前利益/損失 | 利益構成比 |
航空運送事業 | 1,191,091 | 86.6% | 50,713 | 82.2% |
その他 | 184,497 | 13.4% | 10,990 | 17.8% |
合計 | 1,375,589 | 100.0% | 61,703 | 100.0% |
調整額 | ー | ー | 2 | ー |
計上額 | 1,375,589 | ー | 61,706 | ー |
新型コロナウイルスの影響
航空旅客需要は新型コロナウイルス感染拡大により甚大な影響を受け、各国の厳しい出入国制限や検疫体制強化、移動自粛の動きによって航空会社は非常に厳しい経営環境にありました。
2023年3月期は、旅客需要は回復傾向にあるものの、リモートワークの浸透、為替の変動や燃油市況の高騰等により、コロナ前の状況までには戻っていません。
象徴的に日本航空の国際線と国内線の旅客数を4期分で比較してみると以下のような推移となります。
日本航空(フルサービスキャリア領域) 輸送実績
2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | |
2019/4/1~2020/3/31 | 2020/4/1~2021/3/31 | 2021/4/1-2022/3/31 | 2022/4/1~2023/3/31 | |
国際線有償客数 (人) | 8,958,631 | 357,519 | 892,471 | 4,348,562 |
国内線旅有償客数 (人) | 36,411,557 | 12,212,131 | 16,238,833 | 30,109,920 |
2022年3月期(2021年度)の日本航空(フルサービスキャリア領域)の旅客数は、コロナの影響が軽微であった2020年3月期(2019年度)に比較すると、国内線で82.69%まで回復しましたが、国際線では48.54%と、半分程度の実績でした。
しかしコロナ禍による航空業界の未曽有の業績悪化は一過性のものであり、中長期的には日本を発着する航空総需要が成長していくトレンドは変わりません。日本航空では中長期の計画を以下のように示しています。
日本航空の中長期経営計画
日本航空では2030年のJALグループのあるべき姿を「JAL VISION 2030」として発表しています。JAL VISION 2030は、「安全・安心」と「サステナビリティ」を未来への成長のエンジンとして、多くの人々やさまざまな物が自由に行き交う、心はずむ社会・未来において世界で一番選ばれ、愛されるエアライングループを目指しています。
またその実現に向けて、日本航空は2021年度から2025年度までをカバーする中期経営計画を発表、更に2022年5月6日には「2021-2025年度 JALグループ中期経営計画ローリングプラン2022」を策定し、事業を展開しています。
新型コロナ影響の長期化や世界情勢の不安定化、市況の変動等の新たな外部環境変化は踏まえつつも、中期経営計画の戦略の方向性や目標は変更せず、着実に取組みを推進することで、中期計画・経営目標の達成を目指しています。
長期レンジと、中期レンジでの課題を分け、2025年度までに注力する内容を以下のように整理しています。
長期レンジの課題:
ESG戦略の推進による企業価値の向上 (~2030年)
「CO2排出量実質ゼロ」に向けた取組みの推進(~2050年)
中期レンジの課題(~2025年):
- 事業構造改革の加速
-
- 高いレジリエンスを備えたポートフォリオの構築を目指し、事業構造改革を加速
- 航空領域では、基幹事業であるFSC事業の収益性改善に加え、LCCや貨物・郵便での事業拡大
- 非航空領域(マイル・ライフ・インフラ)では、強みである顧客基盤やヒューマンスキルを活かし、成長する分野へ積極的に展開して事業構造改革を牽引
- これらの取組みにより、変化する外部環境の中においても、安定的な事業運営を実現
- DX戦略、人財戦略、GX戦略の推進
-
- DX戦略では、グループ全事業におけるデジタル活用を加速し、お客さまに安全・安心な移動と新たな体験を提供
- 人財戦略では、多様な価値観を尊重し、新たな価値創造に挑戦し変革を起こす人財を育成・採用することで人的資本経営を推進
- GX戦略では2050年の「CO2排出量実質ゼロ」に向けた「SAF*の活用」等の取り組みに加え、「排出権取引」や「CO2回収の新技術」も活用し、国際線を運航する航空会社のCO2排出量削減義務量を確実に達成を目指す
- ネット・ゼロエミッションに向けた航空のリーディングカンパニーとして、経済社会システムの変革と航空産業の成長を両立
- *SAF(サフ)とは、「Sustainable Aviation Fuel」の略で、日本語では「持続可能な航空燃料」の意味で、主に植物などのバイオマス由来原料や、飲食店や生活の中で排出される廃棄物・廃食油を原料とした燃料
- 財務基盤の再構築と持続的成長に向けた財務戦略
-
- リスク耐性の強化を進めながら、持続的な成長に向けた取組みを加速
- 経営資源の配分については、省燃費機材の導入や社会課題の解決に貢献する資産投資に加え、環境対応をはじめとするESG戦略や人的資本経営を推進するための費用も投資と捉え、積極的に配分
- 株主還元については、業績の回復に伴って徐々に拡大し、配当性向35%程度以上の早期に実現を目指す
新型コロナウイルスの蔓延が全世界的に収束し、行動制限が撤廃される状況となり、各国の渡航制限が更に緩和、自由化され、人と人とが気軽に往来できる状況が戻ってきました。
今後はリベンジ消費と呼ばれる個人消費のV字的な回復や、インバウンドをはじめとする観光需要が一気に回復することも予想できます。
日本航空をはじめ、航空会社各社はニューノーマルの時代の状況に応じた旅客増収施策や航空貨物事業の増収を図ると同時に、安心・安全を担保しながらコストの削減努力と成長戦略を展開していくことになります。
将来的に航空業界を就活の対象に考えている方は、ウイズコロナ、アフターコロナの社会・経済の動向とともに、各航空会社の業績の推移を注意深くモニターしていきましょう。
新LCC:ZIP AIR
日本航空とANAホールディングスとの違いはLCC事業への考え方と取り組みです。
日本航空は2012年に就航したカンタス航空のLCC、ジェットスタージャパンに共同出資をしていますが、主導権はカンタスが握っており、その後LCCに関しては積極的に手を打っていませんでした。業界ではJALはLCCに距離を置いていたという見方をされてきました。
しかし2018年5月に、国際線中長距離LCCの新会社を設立すると発表し、LCC戦略を積極化しています。成田国際空港を拠点に、ボーイングB787-8を2機使用し、2020年春から就航を目指して準備するという内容でした。
この新会社の社名は株式会社ZIPAIR Tokyoとなり、エアラインブランド名をZIPAIR(ジップエア)に決定し、国土交通省に対し航空運送事業許可申請を行なっています。2020年夏ダイヤから、ボーイング787-8型航空機2機により、成田=バンコク線、成田=ソウル線の就航を目指して準備を進めてきました。
JALが得意としてきた国際線の顧客層、ビジネス需要とは一線を画し、多様な価値観をもつ顧客に向けてあくまで別ブランドでの棲み分けを狙う考え方です。
JALがフルサービスキャリアとして重視してきた、プレミアム、フォーマル,ラグジュアリーといった価値から、リーズナブル、バリューコンシャス、パーソナルの上に、安全・安心という日本独自の価値を加えたエアラインを目指しています。
ZIPAIR 2023年3月期(2022年度)の状況:
- 株式会社ZIPAIR Tokyo
- 本社:千葉県成田市
- 従業員数:616名
- 運航路線:成田=バンコク、成田=ソウル、成田=ホノルル、成田=シンガポール、成田=ロサンゼルス、成田=サンノゼ、成田=サンフランシスコ、成田=マニラ
ZIPAIRは、日本だけでなく海外においてもお客さまの認知度が高まり利用率が向上、特に高需要期においては満席便が頻出するなど早期に黒字化を達成し、事業運営は順調に推移しています。
2022年12月から就航したサンノゼ線も好調なスタートを切っており、2023年6月からサンフランシスコ線を新規就航、2023年7月からマニラ線の新規就航を予定するなど国際旅客需要の回復と歩調を合わせ、着実な成長を見込んでいます。
2022年度におけるZIPAIRの旅客事業は、有償旅客数は488,210(人)でした。
将来的に日本航空を初め、航空会社を就活の対象と検討される皆さんは、ぜひ世界のLCCの動向やニュースにも着目すべきです。
ZIPAIRは日本航空が中期計画で標榜する「挑戦と成長」の「挑戦」が色濃く反映した大きな戦略ですし、ビジネスモデルの記事でも書きましたが、中長期的には成長のためのイノベーションを具現化する事業だからです。
就活生が気になる日本航空傘下の他の航空会社の概要をまとめておきます。
- 大阪国際空港(伊丹)を拠点に「地域と地域を結ぶことでお客さまに喜んでいただけるネットワークをご提供する」ことを事業目的とする国内線のフルサービスキャリアです。JALグループの地方路線の主翼を担う会社として、国内線JAL便の約3割、1日230便を運航する会社です。
- 日本航空が100%を出資
- 社員数:740名
- オーストラリアのカンタス航空の100%子会社がジェットスター航空(LCC)であり、進出国で合弁会社を設立してグループを形成しています。日本を拠点とするジェットスター・ジャパンは、豪カンタスグループ、日本航空株式会社、東京センチュリー株式会社が出資しています。ジェットスター・ジャパン株式会社は、日本航空の持分法適用会社(出資比率50%)
- 国際線は成田⇔台北、成田・中部・関西⇔マニラ、那覇⇔シンガポール、成田・関西⇔ケアンズ、成田⇔ゴールドコースト、成田・関西⇔ブリスベンを運航(各運航路線は一部変更になる場合があります)
- 2023年7月時点での国内線は、東京(成田)、名古屋(中部)、大阪(関西)と国内12都市(計15都市)を、17路線を運航しています。
- 鹿児島を本社とする、鹿児島、奄美群島7島と沖縄、鹿児島、福岡、松山、大阪(伊丹)、隠岐、出雲、但馬をネットワークする国内航空会社
- 日本航空株式会社の出資比率は60.0%
- 社員数:421名(2023年4月現在)
- 沖縄(那覇)を本社とし、前身は1967年に設立された南西航空です。長く沖縄の翼として島々を結び地域のインフラを担ってきました。現在では沖縄の魅力を世界に発信する役割も担っています。那覇と沖縄の久米島、石垣島、宮古島を結ぶ他、福岡、岡山、小松、大阪(関西)、名古屋(中部)、東京との路線(計16路線)もあります。
- 日本航空出資比率:72.8%
- 従業員数:814名(2023年3月31日現在)
- 琉球エアコミューター(RAC)は、沖縄圏域の航空会社として、沖縄本島を中心に北は与論島、東は南大東島、北大東島、西に久米島、南西方向には宮古島、多良間島、石垣島、与那国島との9の島々を結ぶ11路線を運航しています。
- 1985年の創立以来、地域インフラや観光振興に大切な役割を担っており、主要株主は、日本トランスオーシャン航空㈱74.5%、沖縄県 6.3%、南大東4.8%、久米島4.3%、その他 6.1%となっており、日本航空にとってはトランスオーシャン航空を通じて経営に関与している形です。
- 従業員数:143人(2022年度)
- 北海道エアシステムは1997年に当時の日本エアシステムが北海道内各地を結ぶ『道民の翼』として設立、誕生しました。その後2002年に日本エアシステムが日本航空と経営統合したため日本航空の子会社になりました。
- 日本航空が経営破綻した後は北海道が筆頭株主になっていた時期もありましが、日本航空の経営再建に目途が立った2014年10月に再び日本航空の子会社に復帰しています。現在3機のSAAB340B型機で札幌丘珠空港と函館、釧路、利尻、三沢、女満別、函館空港と奥尻を結ぶ路線を運航しています。
- 日本航空出資比率:57.3%
- 従業員数:84名(2023年4月現在)
スプリング・ジャパン株式会社
- スプリング・ジャパン株式会社(英: Spring Japan Co., Ltd.)は、中国の格安航空会社春秋航空などが出資(春秋航空の資本は、外資規制により、33%まで)し、2012年9月7日に設立されたLCCが2020年度末の決算で債務超過になってしまったのを機に、2021年6月に日本航空(JAL)が春秋航空以外の出資者から過半数を超える株式を追加取得し、連結子会社化した航空会社
- 本社:千葉県成田市
- 2021年11月1日から現行社名に変更
- 成田空港から国内線3路線(新千歳/広島/佐賀)、国際線7路線(ハルビン/寧波/上海(浦東)/南京/重慶/武漢/天津)のネットワーク(コロナの影響で一部路線で運休中)
- 日本航空の出資比率は66.7%(2023年3月末現在)
- 春秋航空日本株式会社 中国のLCC 春秋航空が33.3%出資
以上が日本航空グループ、出資している航空会社の概要です。採用再開の場合、採用は各社で行っていますので、興味がある方は個別の企業を深く研究してみてください。
ただしすべての航空会社が新型コロナウイルス感染症拡大の影響で甚大な被害を受けているのが現実です。
グループ傘下の航空会社を目指している就活生の皆さんは、航空業界や地元に強いこだわりがある方も多いかと思います。
2023年度に入り、国内線・国際線の乗客数が回復期に入って苦境を脱しつつありますが、航空会社は何時の時代でも人気の業界であり、厳選採用であることには変わりはありません。
是非自分が活かせると思う他の業界にも視野を広げて就活を進めてください。
その他の航空会社
日本にはまだまだ航空会社があります。就活生の皆さんがほとんど知らない会社かもしれません。社名のみリスト化しておきますので、興味があれば検索してみてください。
- アイベックスエアラインズ株式会社(本社:東京)
- 国内路線LCC
- 発着空港:札幌(新千歳空港)、仙台、新潟、福島、名古屋(中部国際空港)、大阪(伊丹空港)、広島、福岡、大分、鹿児島
- ANAとのコードシェアあり
- 従業員数:379名(2023年8月1日現在)
- 主要株主:株式会社日本デジタル研究所(出資比率47.9%)
- オリエンタルエアブリッジ株式会社(本社:長崎県大村市)
- 長崎空港・壱岐空港・福江空港・対馬空港・福岡空港・宮崎空港・小松空港・中部空港・秋田空港
- 従業員数:208名(2020年11月1日時点)
- 天草エアライン株式会社(本社:熊本県天草市)
- 天草⇔福岡、天草⇔熊本、熊本⇔大阪(伊丹)線を運航
- 従業員数:58名(2020年4月1日時点)
- 熊本県の出資比率:53.3%
- 熊本県天草島内2市1町の出資比率:26.85%
- 株式会社フジドリームエアラインズ (本社静岡県清水区)
-
- 静岡空港を拠点としたLCCで、熊本、鹿児島、福岡、札幌(新千歳、丘珠)、花巻、山形、青森、仙台、新潟、松本、名古屋(小牧、中部)、高知、神戸、出雲を結ぶ路線を運航(2023年3月末現在)
- 従業員数:567名(2022年7月現在)
貨物航空会社
日本貨物航空株式会社(本社:千葉県成田市)
- 日本郵船株式会社が99.97%を出資。2005年に一旦ANAグループを離れたが、2018年に再びANAと戦略的業務提携について合意
- コードシェア提携、連帯運送の拡大、航空機整備部門における業務協力などを進める予定
- →2023年3月7日に、ANAホールディングスは、日本貨物航空を買収することを発表しています。2023年10月には日本郵船が保有する全株式を取得して、その後は事業の統合を目指す計画
株式会社ANA Cargo
- ANAグループの貨物事業の中核会社として2014年に営業を開始
- 貨物事業戦略の立案・輸送商品やソリューションの開発・セールス・空港オペレーション事業を展開
- ANAホールディングスの完全子会社
まとめ:
航空業界はANAと日本航空だけではなく、広い視野に立てば色んなチャンスも見えてくると思います。
ここ数年は、新型コロナウイルス感染症が未曽有ともいえる航空会社の業績悪化を引き起こしましたが、2023年度に入って国際線需要の回復も顕著になってきています。
ANA、日本航空共に、未だ完全回復とは言えない2023年3月期(2022年度)でも、連結業績で黒字を達成する等、明るいニュースも出てきました。
語学が堪能な方は中長期でのキャリア計画を立てたり、広く外国航空会社の社員や客室業務員になる道も選択肢にいれてキャリアプランを作ることも可能です。
また、航空会社への就職を目指して勉強してきた事ベースに、視野を広げて他の業界で活かせるかを試してみることもお勧めします。
コロナ禍では実際にANAやJALのCAの方がテレビ局のMCのアシスタントやキャスター、レポーターとして活躍している例もありました。
航空会社の選考のハードルは高く、向き不向きがある業界でもあるので、自分の適性をよく考え、他の業界もあわせて検討していくことをお勧めします。
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