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AIによる採用選考の重要なポイントを理解して、エントリーシートや面接に活かそう

そもそもAI採用とは何か

就活生の中には、「AI採用」というワードが、気になっている人も多いと思います。「AI採用」は、企業の新卒や中途の採用時に、志望者の選考通過判定を人ではなくAI(人工知能)が機械的に行うという意味や、選考通過判定そのものは人が行うが、その判定のためのスコアを人の主観ではなく、AIで分析したデータを利用するという意味を含みます。

AI採用を実施している企業でも、現状では選考の全てをAIが行っている企業はなく、選考の初期段階のエントリーシートの合否判定や、一部の面接で使用しているのが実態です。

この「AI採用・AI選考」が日本の就活で話題になり始めたのが2017~18年であり、ソフトバンクやサッポロビールが新卒採用の選考にAIを活用し始めたというニュースが出て、広く知られることになったのです。

AI採用を企業が導入する理由(企業側のメリット)は何か

企業は自分たちの事業を拡大、成長させて利益を出すことを目的としています。そのために重要なのは、活躍してくれる人材であり、そういう人材を一人でも多く採用し、長期間に渡り社業の発展に貢献してほしいと考えます。

そのためには、活躍してくれる可能性の高い人材に入社してもらい、長く会社に貢献してもらうために活躍に応じて正当な評価、ポストと報酬を与える必要があります。

その一連のプロセスを人の眼力や、人による主観的な評価ではなく、Technology の力を使って精緻化・正当化しようというトレンドがあり、それをHR(Human Resource)とTechnology の略語として HRtech と呼んでいます。

新卒採用における「AI採用」、「AI選考」は、AI技術を使用して「自社で活躍してくれる可能性が大きく、長期間に渡り社業の発展に貢献してくれる人材」を発掘して、確保(採用)することに他なりません。

活躍してくれる可能性の高い候補者の母集団の量と質を確保する

AI選考を行う企業は、自社に最適化したシステム開発にコストと労力を割くことのできる大企業や、もともと親和性の高いIT系の企業、そしてHRTeckを売りにしている人材系企業が開発したパッケージソフトを自社用にカスタマイズして使用している企業が中心となります。

これらの企業で、AI採用(選考)の一番の使われどころは、エントリーシートの通過判定です。特に膨大な数のエントリーシートが提出される人気企業が、エントリーシートのスクリーニングにAIを使用しています。

膨大な数のエントリーから、活躍してくれる可能性の高い候補者の母集団をまず振り分けることに利用しているのです。

そしてその母集団の質の精度を上げ、将来活躍してくれる人の数とその確率を上げるのが目的となります。

ただし、AIだけがバッサリと断定して合否を判定するのではなく、無条件で通過するグループ、無条件で落とすグループ、判定を保留し人事部が判断するグループなどのクライテリアをつけて運用しているのが実情となります。

就活生にとっては、エントリーシートのAI判定で「落とされないこと」がポイントになると考えましょう。

企業にとっては人事部の業務負荷を大幅に減らせる

膨大な数のエントリーシートを読むだけでも、非常に多くの時間や人手が必要になります。

特に膨大な数のESが集まる人気企業の中には、手間であっても全部読んで判定する企業もあれば、大学名でスクリーニングを行い、指定大学以外のエントリーシートは読まないで自動的に通過させず、大学名でスクリーニングしたESを読んでその中で合否を判定している企業があるのが現実です。

その判定は人事部や人事部が指定した社員(評価者)の経験値や主観に依存する部分が大きいのです。あらかじめある程度合否の基準を言語化して定めているのが普通ですが、判断するのが生身の人間である以上どうしても主観が介在します。

同程度のポテンシャルがあり、同程度良く書けているESでも、判定者の違いによって合否が分かれてしまうのです。そして読む順番や、読み手のコンディションにも結果は左右されてしまうのです。

個人の主観に依存するということは、「その企業に適していて、将来大活躍をしてくれる人材」を見落としたり、適性検査や面接をする前にてしまう結果を招きかねません。

エントリー数が少ない企業であれば、複数の人間が集まったESを評価して、個人の主観の働く余地を狭めることもできますが、人気企業では不可能です。大手企業の場合、ESの読み込み評価の一部業務を、人材会社に委託する企業もある程です。

AI選考を導入することで、人事部にかかる業務負荷と人による間違った主観的な判断を減らし、企業が採用したい、質の高い候補者の母集団をつくるのが、エントリーシートの判定にAIを使用する企業側のメリットなのです。

ES判定の業務負荷を減らして浮いた時間を、面接に振り向けできるだけ多くの学生に会ってみたいというののが本音となります。

AIを面接に利用する企業のメリット

AIを面接に利用している企業はそれほど多くありません。AI採用を導入している企業でも、AIはESの選定や適性検査のデータ分析に使用し、面接ではそのデータが面接官に送られて、面接時の資料として使用している企業が殆どです。

殆どの企業が、そのデータを参考にしつつ、面接官が選考通過の判定を行うのが一般的です。

AIを面接の手法としてダイレクトに取り入れる場合は、以下の3点が主な理由です。

  • 面接の初期(一次面接)段階では、できるだけ多くの学生の評価をしたい、大きな母集団の中から選考したい
  • 初期段階では面接官個人の主観的判断を排除し、データに基づいて科学的な手法をとりたい
  • 人事部や評価者の業務負荷を減らしたい

AIが面接官となる場合は、場所や時間の制約が限りなく広くなります。学生側の端末からシステムにログインすればよいので、学生は極論すれば24時間、世界のどこにいても面接を受けることができます。

企業側は人を張り付けないで疑似的な面接試験を行うことができるという訳です。

プログラムによっては、面接の中にゲーム的な要素を入れてその場で問題を与え、所定の時間内で問題を解いたり、結論を出させたりすることもできるのです。

更に、回答や結論はもちろんのこと、それに至る思考方法やプロセス、論理の整合性、応答速度や、声の大きさや張り、目線の動きや挙動を解析することも技術的には可能です。(手ごわいですね)

新型コロナウイルスの動向を注視しよう

2020年3月の一般選考ルート解禁直前に勃発した新型コロナウイルスは、就活にも大きな影響を与えました。会社説明会はもとより、適性・能力試験、面接がオンライン化され、最終面接までオンラインで完結する企業も数多くみられました。

AI技術を利用した選考方法は、前述のAI面接のメリットでも分かるように場所と時間を選ばず、学生の能力やポテンシャルを科学的に分析できるため、オンライン化の究極のカタチとも言えるのです。

進歩的な企業は「新しい生活様式」の「就活の在り方」としてAI採用の積極的な導入を行っていくでしょう。就活生は、そのトレンドを注視しておきましょう。

AI採用を導入する企業側のデメリットとは

精度を上げるには手間と時間、コストが必要

採用プロセスにAIを導入するには、手間も時間もコストもかかります。何故ならAIが学習するデータの量と質によってその精度が影響されるからです。

エントリーシートの合否判定だけに限って言っても、現在その企業で活躍している人材の適性データやモチベーションファクター、その人が学生時代に提出したエントリーシート等々のデータ(教師データ)が豊富にそろっており、それを学習させて基準を作っていく必要があるからです。

更に精緻化するために、活躍していない社員のデータや、入社段階では評価が高かったが辞めてしまったり、活躍出来ていない社員のデータ、逆に入社段階では評価は低かったが、その後目覚ましい活躍をしている社員のデータ等も学習させていくこともできるのです。

AI採用を導入して数年の歴史があれば、AI採用で入社した社員のパフォーマンスや活躍の要因分析を行って、判定基準に加えていく必要もあるでしょう。

このように、AI採用を自社に最適化させ、採用を成功に導くには、AIシステムそのものがその目的に沿うように設計されていることと同時に、有効なデータをどのように学習させ進化させていくかという大きな課題があるのです。

人材会社(HRTech)企業が開発したシステムをカスタマイズすれば、そこまでの業務負荷やコストはかからないかもしれませんが、それでも数年かけてデータを蓄積し、精緻化していくことは必要になります。

AI採用は必ずしも売りにならない

AI採用は導入した企業も少なく、その歴史も浅いことから社会的な評価が定まっていないのが実情です。進歩的な考えを持つ企業が導入を検討していますが、学生の側に拒否反応が強いのもまた事実です。

「当社はAI採用を導入している」ということが、必ずしも優秀な学生を集める「売り」にならないという面もあるのです。せっかく手間とコストをかけて導入しても、「学生が敬遠してしまう」ということもあり、積極的に導入をアピールしている企業は多くありません。

またリクナビの問題がマスコミに取り上げられてから、学生の側\が企業のデータの取り扱いにセンシティブになっているということもあるでしょう。

AI採用の学生側のメリットとデメリット

AI採用が話題になった2~3、年前の状況では、学生に「ESの合否判定にAIを活用する動き」について尋ねた調査では、反対39%、賛成19%、どちらともいえないが42%という状況で、反対が賛成を倍以上、上回っていました。

反対派は一生懸命作成した「エントリーシートを人が読まないで、機械が読んで判断する」こと対する不満や不安が主な理由としてあげていました。

賛成派「人事の人の主観や、どの人が読むかによって結果が違うのはフェアではないので、AIでも正当に評価されるのであれば構わない」、「多くのESが読みもせず捨てられるより、AIが全部読んで判断する方が受け入れられる」、「合否の判定が早まる」ことをあげています。

現状では賛否が分かれるAI採用ですが、AI採用を導入している企業に対し「その企業に入りたいからAI採用を止めて」と言えないのが現実です。

企業は、採用プロセスの一部にAIを介在させているレベルなので、あまりデメリットに神経質にならないようにしましょう。またAI採用を導入している企業の割合は数パーセントに過ぎず、それほど神経質にならなくても、他の選択肢を取れば良いだけです。

「AI採用は許せない!」と思った段階で、あなたとその企業の価値観はずれているため、同じベクトルで働くのはしんどく、あなたの「就活の軸」が実現できない可能性は高いと考えましょう。

就活は「自分でコントロールできないこと」に意識や時間を振り向けるのはナンセンスです。「納得できる内定」を獲得するために、「自分でコントロールできること」に注力をしていきましょう。

AI採用に対する有効な対策はあるのか

ここからは、AI採用導入している企業を志望する際の有効な対策を解説します。

有効な対策といっても「正解」のように明確なものはないです。企業によって、合否判定に「何をおいて、どのような基準で判断しているかがばらばらであり、ブラックボックス」であるからです。

更にデータの追加や入れ替え等によって進化していくのがAIの特徴なので、「これが有効な策だ」とはっ切り言えるものがないのです。もっと言うと、「AIが設定した合否判定の理由」の解析すら難しいというのが現実です。

そうはいっても、AIの設計思想から、「何を重視するのか」という判断の傾向はある程度読めるため、それをESや面接に応用していく方法はあります。

AI選考のキーポイント

AI選考、AI採用でケアすべきポイントはいくつかありますが、以下のポイントは重要なので、それを頭に入れてエントリーシートの作成や面接に臨みましょう。

  • 自身の「就活の軸」と企業のビジョンンの合致
  • 企業の求める人材像を構成する要素との合致を意識する
  • 企業の採用ページにある、「活躍している若手社員・先輩」のエピソードやストーリーを読み込み、どんな行動特性を持っているのかを洗い出しておく
  • 自分の自己PRを「行動特性」を強調して作成する(行動特性が明確になるように文章を書き換えてみる、上記の社員の行動特性に近いものがあればそれを活かせるかを検討)
  • ガクチカや自己PRで象徴的に培われた行動特性が、他の機会でも「再現」されており、現在の自分自身の「強さ」となっていることを文章で表現する(過去→現在の再現)
  • 自身の「強み」を志望する企業で活かす、仕事における再現性を表現しておく(現在→未来の再現)
  • 誤字脱字、表記の揺れ、文字制限(90%~100%以内)に注意を払う

このようにAIが判定するエントリーシートのキーポイントは、通常のエントリーシートを作成するキーポイントと大きな違いはありません。

強調したいのは、エントリーシート全体を通じてその企業に対する「就活の軸」と、その企業のビジョンが同じベクトルであることが伝わること、自分の行動特性が強みとして表現され、再現性があり、仕事に活きるものということが強く伝わる、伝わり易い明確な表現になっているというポイントです。

はじめから、企業の情報に合わせてエントリーシートを作るのはNGです。そんなことをして、仮にES選考を通過できたとしても、面接で嘘やメガ盛りはバレます。あくまで自己分析を行った「自分のエントリーシート」を上記のポイントを考慮しながら作成してください。

「自分のエントリーシート」を作成したら、上記のポイントをもう一度見直して、推敲・改善をしていきましょう。

AI面接のキーポイント

AI面接も面接の初期段階として行われることを考えると、上記のエントリーシートにおけるキーポイントと変わりません。

もちろん面接なので誤字脱字、表記の揺れ、文字制限(90%~100%以内)は関係なくなりますが、その代わりに以下の点を注意してください。

  • その企業に対する志望動機が自分の「就活の軸」を実現するものとして説明されること
  • 応答速度は極端に速める必要はないが遅すぎるのはNG
  • 張りのある声で、はっきり明瞭に答える
  • 結論ファーストで分かり易く、結論を先に述べ、その理由をフォローする話法をとる
  • 出来る限りリラックスして下などを向かず、目線や挙動を安定させる

尚、面接でも「行動特性」と「再現性」は重視するポイントです。この行動特性と、仕事での再現性をコンピテンシーと言い、「その企業で活躍し、成果を出している人材が共通にもっている行動特性」を割りだすのが「コンピテンシー面接」という手法です。一部の企業で採用されている面接方法なので、リアル(オンラインも含む)とAIの両方の対策として押さえておきましょう。

詳しくは以下の記事で解説していますので、参考にしてください。

こちらもリアルな面接と変わりません。リアルな面接を受けると思って臨めば良いです。ただし、画面越しだからといってメモや資料に頼らず、そういうものが頼れないリアルな面接として準備をしてください。

AIによる判定をイメージするには、カラオケのAI採点をイメージすれば分かり易いと思います。音程正確率や安定性、表現力、リズム、ビブラート&ロングトーン等の軸があり、それがレーダーチャートになっているイメージです。

就活のAI採用の場合は、その企業が重視する行動特性の軸が設定され、例えば「バイタリティ」、「行動力」、「ストレス耐性」、「柔軟性」、「目標に対する意識」、「主体性」・・・等々の基準を満たすか、活躍している社員のパターンとの近似性、出現頻度や相関性から指数化され、データしてアウトプットされると考えればイメージしやすいでしょう。

志望者(面接参加者)の多い企業の面接の初期段階では、このデータのみで合否判定する場合もあると思います。二次面接以降は対人(オンライン・オフラインとも)面接になり、AI面接のデータが二次以降の面接官の資料として使用されるのが一般的なパターンです。

AIと就活の微妙な関係

最後に、エントリーシートや初期段階の面接の判定であれば、上記のようにAIを使用する目的やAIが担う役割は分かり易いのですが、就活に関連してAIは違う目的・場面でも使用されています。

例えば就活生が今までSNSに投稿してきた内容をデータとしてとりこみ、その行動特性あぶり出すということも可能であり、それをサービスとして企業に提供している会社もあります。

この場合、エントリーシートの記述内容の真偽の判定や、カウンターチェック用のデータとして活用されるのです。

またマスコミで取り上げられて問題となった、「リクナビDMPフォロー」という企業向けサービスで、リクナビが「AIを使用してリクナビ使用者の閲覧データを分析し「内定辞退率」を推定して企業に提供していた」というニュースは就活生の記憶に新しいと思います。

AIテクノロジーの発展は加速度的に進化しているため、就活生にとって将来非常に便利で使う価値が高いサービスが生まれる反面、上記のようなブラックボックスで、知らない間にデータが分析され、企業に提供されることもあり得るのです。

リクナビの例では個人が特定できなければ、まだ大きな問題にはならなかったと思いますが、学生が知らないところで企業側のデータを入手してリクナビ側のデータと紐づけて個人の内定辞退率の推定を可能にしたことから、社会的にも糾弾され大きな問題にまで発展してしまいました。

今できることは、真剣に就活に取り組んで、「納得できる結果」をつかむことです。就活を効率的に進めることは重要ですが、奇策はそんなに存在しません。AI採用を勝ち抜くのも、結局はその特性を理解した上で、データの扱いには注意して、地道に努力することしかありません。