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就活を拡げる、BtoB 業界・企業の選び方

就活情報サイトや就活本、マニュアルには、BtoC企業だけではなく、BtoB企業に目を向けて志望業界や志望企業の幅を広げようというアドバイスが出ています。

誰もがテレビコマーシャルで知っているようなBtoC企業しかエントリーしないで、書類選考さえ通過できない学生もいるため、そういう学生は視野を広げていくことで、無内定のリスクを減らそうというものです。

その意味では適切なアドバイスではありますが、「就活の答え」を読んでいただいている皆さんは既に常識、「そんなこと分かっているよ!」といったところでしょう。

BtoB業界、BtoB企業という括りでは、あまりに大雑把であり、視野の拡げ方も分からないのではないでしょうか?

「就活の答え」では、具体的にどんな視点で、どのように業界を捉え、またどこに着目して企業を選択すべきかを徹底解説します。

新型コロナウイルスによる社会や経済の変化で先行きが不安な23年卒の就活生は、視野を広げて就活を考えるために役立ちます。

BtoC、BtoBを理解する

BtoCはBusiness to Consumer、BtoBはBusiness to Business の略語で、就活生の皆さんは感覚的に企業を振り分けて考えていると思います。

しかし、企業活動の実態はそんなに単純ではありません。

提供する製品やサービスが直接、消費者が購入し消費する産業や企業がBtoCであり、提供する製品やサービスが法人顧客(企業や公的機関)向けのものがBtoBなのですが、同一企業でその両方のビジネスを展開している企業も数多くあります。

営業で言えば法人営業部とリテール営業部がある金融機関もそうですし、メーカーやサービス関連でも一般消費者向けと、法人や公共機関向けの両方を扱っている化学メーカー、インフラ・エネルギー関連など、多種多様に存在します。

そのような企業に就職した場合、BtoCビジネスをしたいと考えて志望しても、実際の配属がBtoB事業であるという事は日常的に起こります。当然その逆も同じです。

BtoC企業の代表例である、食品メーカーやトイレタリーメーカー、家電メーカーの営業の取引先は卸売商社や大手流通小売企業であるため、メーカーはBtoC製品を製造・販売しているが取引先は消費者ではありません。

広告会社もクライアントの商品やサービスを消費者に伝え、販売を促進することが使命であるため消費者に向き合いますが、取引先はクライアント企業と媒体各社というBtoBビジネスなのです。

就活生に人気の高い「総合商社」、「専門商社」、「コンサルティングファーム」は典型的なBtoB企業す。

更に世界市場においでて日本企業が重要なポジションを占めている電子部品業界、ロボットや産業機器、機械メーカーは代表的なBtoBであり、高収益、優良企業も数多く存在します。

従ってBtoCだから、BtoBだから、という分類に大きな意味はないと考えます。

重要なのは「あなたが幸せになれる会社」を選ぶことです。

その視点で考えるとBtoC産業や企業だけにこだわり、視野を広げないことは、「幸せになる選択肢」の大部分を初めから捨てていることに気が付くと思います。

BtoC企業は、誰でも知っている企業が多く、大企業の場合は特に就活人気が高いため、何千、何万というエントリーが殺到します。

そのため選考通過は非常に難しいため、4月、5月で全滅ということにもなりかねません。早い段階からBtoBと呼ばれている産業や企業の幅を広げておくことは非常に重要です。

では、どのように視野を広げれば良いのでしょうか?この記事では就活の前半戦でBtoB領域への視野の拡げ方と企業の選び方を解説していきます。

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BtoB産業の選び方

BtoB領域に視野を広げると言っても、基本は職業、仕事を通じて「自分がやってみたいこと」と「将来なりたい自分の理想像」に重なるかを考えることです。それがBtoCの業界であれば、その産業でのBtoBビジネスを展開している企業や、近い業界でのBtoBビジネスを考えてみましょう。

たとえばクルマ(完成車)メーカーを志望している人であれば、クルマの中核的な部品を製造している部品メーカー、トラックメーカー、二輪メーカー、建設機械メーカー、農機具メーカー等というように展開して、業界・企業研究を進めて下さい。

食品メーカーを志望している場合はOEM専業メーカーや食品原料メーカー、食品商社や小売業での食品バイヤーやプライベートブランドの開発という選択肢もあるでしょう。

このようにBtoC領域の産業でも、法人向けや近接した業界でのBtoB領域はみつけられるものです。

企業研究まで行い、興味が湧けば精査してエントリーを追加していきましょう。

新たな業界を加えていく

就活を進めていくうちに、当初思いもしなかった業界や企業に興味が湧くこともあるものです。

「興味が湧く」ということは、あなたの価値観に、何かのリンクがあるはずです。そのリンクをたどって自己分析を深めて行くことによって、自分を再発見できることもあるのです。

「何故、興味が湧いたのか」の「何故」を繰り返して自分に問いかけることにより、自分が好きな何かが見えてきます。

それを手掛かりに業界研究と企業研究を行い、興味が高まれば精査してエントリーを追加していきましょう。

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ただし、どうせ選ぶなら「自分が幸せになる」確率の高い企業にエントリーしたいものです。

「自分が幸せになる」確率の高いBtoB企業とは、どんな企業なのでしょうか?「就活の答え」編集部のアドバイスをお届けします。

選ぶなら「こういうBtoB企業」を選ぼう

就活サイトの中にはBtoB企業をBtoC企業との比較で、BtoB企業押しのコンテンツも数多く見かけますが、そう単純ではありません。

BtoBでも「あなたが幸せになれる」企業でなければ意味はありません。BtoB企業だから高収益ということもありません。

高収益のBtoB企業には、高収益になれる理由があるのです。それをしっかり把握しておきましょう。

市場占有力のある企業

BtoB企業の中で、優先的に選択するべき企業は、参入している製品・サービス分野での市場占有率が高い企業です。

話を分かり易くするために電子部品製造業を例にすると、市場占有率においてトップを握っている部品メーカー、もしくは2位、悪くても3位までに入っている分野を出来るだけ多く持っている部品メーカーです。

多くの業界では業界1位と2位までの企業が、その業界全体の利益の75%以上を占めていると言われています。

そしてこれらの強い事業は営業利益率が高く、市場占有率が低い弱い事業は営業利益率が低いのです。

市場占有率が高い製品が幅広い業界に使用され、顧客が分散化している場合は更に優れたBtoB企業ということになります。その部品が電機、機械、医療機器、自動車などの幅広い産業の企業で使用されていれば、リスクも分散されるからです。

このような良好な状態を作れている企業の共通する特徴は以下の通りです。

  • 技術の優位性が顕著
  • 中核となる事業(製品・サービス)の市場占有率が高い
  • 日本のみではなく、世界を市場としている
  • 顧客に支配されないビジネス環境がある
    • 参入障壁がある(特許・利権・価格決定力・規模・公的インフラ等)
  • 売上利益率が高く、利益額も大きい
    • 販売量による固定費・開発費の回収が速い
    • 販売量による製造原価の低減ができている
  • 市場の変化に対する対応力がある
  • ニーズを先取りして自ら先行して技術開発を行っている
  • 企業と社員を育成し、適切に報いて成長を図る経営哲学・文化がある

技術の優位性がある企業

上記の全部を満たしている企業はほとんどないですが、特に重要なの市場占有率(その分野で唯一無二の存在であれば尚良い)とそれを可能にしている技術の優位性です。その二つが無いと、後の項目はほとんど実現するのが難しいからです。

仮に世界にその部品を作れる企業が1社しかなければ、市場占有率は100%となり、市場そのものはニッチでも世界全体に供給できるため、ある程度の販売量を確保できます。

必要な部品を供給できるのは1社のみであれば、価格の決定力、主導権も握れるのです。

市場占有率100%というのはあくまで極端な例ですが、他社が追随できないような高い技術力、品質、性能を提供でき、その分野のトップシェアを握ることができれば自ずと不毛な価格競争に巻き込まれないで済むのです。

電子部品業界で言えば市場占有率10%~30%のトップシェアの部品群を持つことで、高い収益を上げているメーカーも数多いのです。

BtoBだから安定・安心という嘘

多くの就活情報サイトでは、BtoBは利益が安定しているという話が出てきます。

誤解してほしくないのは、BtoB企業の大半が上記の様なトップシェアや高い市場占有率を達成している訳ではありません。

むしろ、「部品メーカー」を例にすると、(完成品メーカーが厳しい競争にさらされている消費財の場合は特にそうなのですが、)「部品の値段は下がるもの」という悪しき認識が存在しています。

  • 完成品メーカーも厳しい価格競争にさらされているため、利益を出すためにはコストを下げるのは当然→
  • 部品メーカーはその完成品メーカーへの納入シェアを保つため部品価格を下げる→
  • 競合している他社も部品価格を下げる→
  • 対抗するために更に価格を下げる

上記の不毛な価格競争が始まり、部品メーカーも利益を出せなくなるのです。

技術革新による価格低下

現在は技術の革新のスピードが速く、更に技術の流失や新興国の技術学習能力も上がっているため日本企業の技術力が高くても、安心していられません。

主に情報機器や電気機器分野における技術革新は、部品・製品価格の低下→需要の拡大→産業規模の拡大→更なる価格低下→更なる用途拡大、というサイクルを作っています。

皆さんの身近な製品ではハードディスクドライブやフラッシュメモリー、液晶テレビなどを考えれば分かると思います。

技術革新のスピードが速いことは、価格下落のスピードが速いことを意味するため、以前よりも販売数量の増加による価格下落を補えるほどの利益が出しにくい構造になっています。

また技術の流出や新興国の技術力が上がっているため、一部の製品では製品の品質でも差別化が難しくなり、安い労働力による価格競争で負けてしまうことも常に意識しておかなければならないのです。

従って技術を取り巻く環境の変化に素早く対応できるBtoB企業こそが、選ぶべき企業ということになります。

BtoB、BtoCビジネスに関わらず、価格はいったん下げたらそこから上げるのは非常に難しい性格のものです。

あらゆるビジネスにとって、価格競争に出来るだけ巻き込まれないようなビジネスのポジションを持つことが重要です。

就活においても、業界や企業の特長をその視点からみていくことです。併せて参入障壁が高い業界や、特許等で参入障壁を作れている企業、リスクが分散できているかどうかも、しっかりと見ていきましょう。

BtoC企業、BtoB企業の「価格決定力」比較

企業の収益力を考える上で、価格決定がどのようにされるかがとても重要な視点になります。

資本主義では財・サービスの価格は市場が決定し、その市場は需要と供給と競争状況によって決まる原則になります。

BtoC市場において、需要が低迷しているにもかかわらず、その商品カテゴリーへの参入企業が多いと取引価格は低下し、企業は利益を出せなくなります。

企業は厳しい競争を勝ち抜いて、少しでもシェアを拡大し販売数を上げようと値引きを行い、過度な価格競争に巻き込まれていきます。

その競争に敗れた参入企業が撤退し、ある水準で価格は下げ止まるというのが市場メカニズムです。

BtoC市場では消費者が相手の為一般的に販売量が多く、薄利でも販売量の多さで利益を稼ぐ構造となるります。

まれに、特許や独自の技術や付加価値により、独占もしくは寡占の状況にある商品やサービスも存在しますが、多くの場合は競合する企業と常に厳しい競争をしているビジネスとなります。

価格の決定という意味では流通・小売企業の影響力が強いのも特徴です。

また商品によっては競争相手は日本企業だけではなく、グローバル企業やOEMブランド、韓国・中国・台湾等の生産コスト面で有利な企業との競合になります。

家電製品などは、かつては韓国・中国・台湾等のメーカーの製品の価格は安くても品質やブランドという意味で日本企業の製品が好まれていましたが、海外メーカーの技術・品質の向上により、もはやそう言ってはいられません。

多くの日本ブランドの製品の製造も韓国・中国・台湾等で行われているため、品質に差はないと考えるべきです。海外市場では既に日本ブランドがマイナーなものとなり、日本市場でも益々利益を出しにくい事業となってしまいました。

これらを考えると、知名度があり華やかなイメージのあるBtoC企業だけに拘るのは、長い職業人生を考えるとリスキーであることが分かると思います。

日本企業が得意としていた液晶テレビや液晶ディスプレイ、携帯電話があっという間に世界市場での競争力を失ってしまったこと考えると分かり易いと思います。

その間、サムソンやアップルに電子部品を供給して高い利益を得ていたのがBtoB企業の日本の有力電子部品メーカーなのです。

部品メーカーに独自技術や優れた品質があれば、完成品メーカーからオファーを受けることができるのです。そしてその部品が「代えがたいもの」であれば、価格交渉の主導権すら握れると言う訳です。これが優れたBtoB企業の営業利益率が高い理由なのです。

就活の文脈で言えば、家電製品や消費者向け情報機器に興味がある人なら、その機能の重要部分を担っている電子部品にも興味の幅を広げられるのではないでしょうか?

このようなリンクを作っていければ、かなり広い範囲で業界や企業の幅を広げることができるでしょう。

市場は小さくても世界市場でのトップシェアを狙う企業

BtoB企業にとって非常に重要なのは独自性であり、代替が困難な財やサービスを提供しているかということになります。

この戦略を突き詰めたのがグローバル・ニッチ・トップ(日東電工の登録商標)という考え方であり、日東電工は小さな産業において世界トップになることを目指して事業を展開しています。

華やかな1兆円産業の5%のシェアで500億円を稼ぐより、世界の市場規模が1000億の産業でシェア50%の500億円を稼ぐ方が良いという考え方です。

技術、品質、性能の優位性によって小さい市場でも市場を支配し、その小さい市場を複数持っていくことで企業を成長させる戦略をとっている企業にも着目してください。

ニーズを先取りして自ら先行して技術開発を行っているか否か

BtoBビジネスは顧客の要求に限りなくミートした財やサービスを提供することで成り立っているビジネスです。

その意味で全く新しい価値を創造して新たな需要を自ら創り出すようなBtoCビジネスのような醍醐味は少ないかもしれません。

しかし本当に力のあるBtoB企業は、顧客のニーズが顕在化する前に自ら研究や技術開発を進め、先回りができる企業なのです。

顧客が欲しい機能や製品を実現して供給するだけでは、本質的な付加価値は提供できないし、主導権も握れないという考え方です。

もちろん完成品メーカーとの共同開発という道もありますが、その先を行くことができればゲームのルールそのものも変える可能性すらあるのです。

技術開発に向き合う姿勢や考え方、創造性や新しいアイディアに対する取り組み方もBtoB企業を判断する指標になります。

いくら職人的な高度な技術があって、現状は利益が出ていたとしても、頑なにそれだけに拘っている企業の将来性は低いと考えるべきです。

変化に対する対応力は、どんな業界、企業でも非常に重要です。

企業理念、企業文化、特に社員に対する姿勢も大事なチェックポイント

最後に重要なのは企業理念や企業文化です。経営者の経営哲学と言っても良いでしょう。

高い営業利益率を誇り、利益を上げていることは前提としても、その利益を企業の成長にために投資しているかも大事な判断基準です。

前述のプロアクティブな基礎研究や技術開発に投資をしていることも重要ですし、社員の努力に適切に報いて、社員が企業と同じベクトルで頑張れる体制を敷いているかも重要です。

変化の激しい時代で、企業が継続的に利益を出し続けるためには「限りない改善活動」や「技術革新」が必要ですし、それらを本気になって取り組んでいる優秀な社員が定着しているかも重要なポイントです。

特に人材育成に関しては、属人的な評価ではなく、公平な基準による評価が公正に行われていることも優秀な人材が定着するエンジンになります。

短期的な収益だけに拘って社員の頑張りに報いない企業、頑張っている社員をリストラしてでも利益確保に踏み切る企業、社員の代替はいつでもできると考え社員を大切にしないBtoB企業は、一時的な利益は出せても、本当に強い企業に成長できません。

M&Aを駆使して事業領域を広げるのもありですが、投資目的ではなく、しっかりその企業が提供する製品・サービスの市場の市場占有率を高め、高い営業利益率を確保して利益を出しているかもみていきましょう。

簡単に言えば、企業や社員を育てて、報いる企業文化があるかどうかです。

優秀なBtoB企業に出会うためには、まず自分の視野を広げる事です。企業の知名度や就活人気に拘ることが無意味であることが分かるはずです。

まとめ:選ぶべきBtoB企業の基準

選ぶべきBto企業とは、以下の特長がある企業です。

  • 技術の優位性が顕著な企業
  • 中核となる事業(製品・サービス)の市場占有率が高い企業
  • 日本のみではなく、世界を市場としている企業
  • 顧客に支配されないビジネス環境がある企業
    • 参入障壁がある(特許・利権・価格決定力・規模・公的インフラ等)
  • 売上利益率が高く、利益額も大きい企業企業
    • 販売量による固定費・開発費の回収が速い
    • 販売量による製造原価の低減ができている
  • 市場の変化に対応できる企業
  • ニーズを先取りして自ら先行して技術開発を行っているか否か
  • 企業と社員を育成し、適切に報いて成長を図る経営哲学・文化のある企業

BtoB企業の中でも、自分の価値観に合う、優良企業を見つけてエントリーを拡げていきましょう。