就活では、志望する業界を選び、そのプライオリティを決めたら、業界毎に志望する企業を選びます。
企業を選ぶ際は就職四季報を読んで就活に関わる重要項目を比較したり、新卒採用サイトを詳細に呼び比べたりしてある程度の絞り込みをしています。
更にOB/OG訪問ができれば先輩の「生の声」を参考にしたり、インターンシップに応募して志望意欲を̝高めていきます。
この流れはエントリーした後、選考通過の状況をモニターしながら志望業界や企業へのエントリーを追加する際も基本的に同じです。
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主観や感情に左右される企業選択
人間の行う選択や行動は必ずしも合理的ではありません。そこに個人の感情や主観が介在するので、ある意味当然のことなのです。
上記の志望企業を選ぶプロセスでも、企業が作っている採用ページは基本的に企業の良い面しか訴求していません。
あなたがその企業に「好感」をもっていれば、「都合の悪い情報」は見えなくなるか、見えていても気にならなくなるのです。
OB/OG訪問をしても、「この会社は止めておいたほうが良い」という先輩はほとんどいないでしょう。先輩はほとんどの場合、「良い面、悪い面」を説明して、判断をするのは「あなただ」と言います。
悪い面を、よい面より強調して説明する人もいません。したがって、あなたがその企業に「好感」を持っていれば、よい面を受け入れて志望する行動に移るでしょう。
あなたの主観や感情は、あなたの価値観を反映しているため、このプロセスが悪いわけではありません。しかし、あなたの人生に大きな影響をあたえる新卒での企業選びなので、それだけでは不十分なのです。
企業選択のプロセスで重要なのが、客観的なデータを冷静に比較できるかどうかという点です。
就職四季報の情報は重要な客観データ
筆者が、「就活に関する書籍で、一冊しか購入できないとしたら何を購入するか」と問われたら、間違いなく選ぶのは東洋経済新報社が発行している「就職四季報 総合版」です。
毎年秋に発行され、業種別で約5,000社以上の就活に必要な客観情報を俯瞰できるのでお勧めです。
就職四季報では、会社ごとに以下の客観データを得ることができます。
- 社名
- 株式公開状況
- 特色
- 修士・大卒採用数
- 3年後離職率
- 有休取得年平均
- 平均年収
- エントリー情報と採用プロセス
- 試験情報(重視科目、選考ポイント、プロセスごとの通過率、倍率)
- 男女別採用数(過去3年データ)と直近年度の新卒配属先ほか
- 直近年度採用実績校
- 残業(月平均時間)
- 記者評価
- 給与・ボーナス・週休制度・有休ほか
- 従業員数、勤続年数、離職率
- 求める人材像
- 会社データ(住所、電話、WebサイトのURL、社長名、設立年、資本金、今後力を入れる事業)
- 業績データ(直近3年度の、売上高、営業利益、経常利益、純利益)
「就職四季報」では上記の重要な情報が非常にコンサイスにまとめられています。3年後離職率や有給取得数、平均年収など、他の情報ソースから得られない情報もまとめられています。
しかし、企業が公開したくない情報はNA表示となっており、分からない場合もあるので、全情報が手に入るわけではありません。
特に業績データは数字が無機質に小さく並んでいるだけなので、その企業の業績を就職四季報から読み取るのは難しいのです。
そこでおすすめしたいのが、有価証券報告書を活用することです。
有価証券報告書を就活に利用する方法
有価証券報告書とは何か、就活との関係は?
有価証券報告書とは、上場企業や特定の条件に該当する企業が金融商品取引法に基づいて開示することが義務付けられている事業や業績等に関する開示資料であり、企業のホームページのIR情報のページか、金融庁のシステムであるEDINETから閲覧・ダウンロードが可能です。
有価証券報告書の提出義務者は細かく規定されていますが、就活においては株式を上場している企業、店頭登録されている企業と考えればよいです。
株式を上場していない企業は、どんなに大きな企業でも有価証券報告書の提出義務はありません。
例えばサントリーホールディングス株式会社、株式会社竹中工務店、株式会社YKK、株式会社ジェイティビー、株式会社ロッテ、日本IBM、森ビル、朝日新聞社、小学館、等々、それ以外でも非上場の大企業も少なくありません。
上場している企業であれば、安定していて業績も悪くないと思うかもしれませんが、上場と業績は直接の関係はありません。
上場してしても業績不振、赤字の企業もあります。
しかし、上場しているということは株式を投資家に公開しているため、株主の期待に応えるために、業績を良くして配当や株式の価値を高めることが求められているため、就活においても一つの判断基準にはなると思います。
有価証券報告書の目的は、投資家に企業の現状と業績(決算)の客観的なデータを提出・公開し、投資家は投資によって配当金や売却益が得られる可能性を判断し、投資の可否、投資額の分析に利用されるものです。
就活という文脈では、就活生はその企業に自分の能力や労働を投資し、報酬というリターンを得るという意味では、(短期の投機目的の投資家ではなく)長期の投資家と同じベクトルにあるとも言えるのです。
非常に大雑把ではありますが、有価証券報告書を提出している企業の中から、業績や事業の現状をしっかり理解したうえで企業を選ぶのは一つの選択肢にはなります。
就活目的で有価証券報告書をチェックするポイントを徹底解説
有価証券報告書は、基本的には四半期(3ヵ月)ごとに発行し、第四四半期(年度決算において最後の四半期)のものが、その決算年度(1年間)の業績を確定するものになります。
就活においてまず、見るべきものはこの年度決算の有価証券報告書(通期)のものです。
有価証券報告書は、原則的にその企業の決算期日(事業年度の末日)後、3カ月以内(外国会社の場合は6カ月以内)の提出が義務付けられています。
多くの日本の上場企業は3月が決算月となり、決算記述は事業年度の末日、3月31日となります。
したがって、これらの企業が有価証券報告書を提出する期限は遅くとも6月末までとなります。(12月決算の企業は3月末まで)
例えば2023年卒の就活生の皆さんは、2021年7月以降であればほとんどの上場企業の2020年度(2021年3月期)の通期決算の詳細を知ることができるのです。
有価証券報告書で注目すべき項目
有価証券報告書は少なくとも100ページ以上、企業によっては200ページ近くになります。就活のためには全部読む必要はなく、注目すべきポイントに絞って読めばよいです。
「就活の答え」編集部が企業をチェックする上で重視している項目、ページを公開しますので是非参考にしてみてください。
ほとんどの有価券報告書には目次があります。情報の掲載順も共通なので、以下のページ(項目)は必ずチェックしてください。
- 企業の概要
- 【主要な経営指標等の推移】
- 【事業の内容】
- 【従業員の状況】
- 事業の状況
- 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
- 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
- 【研究開発活動】
- 提出会社の状況
- 【大株主の状況】
- 経理の状況【連結財務諸表】
- 【連結貸借対照表】
- 【連結損益計算書】
- 【連結キャッシュ・フロー計算書】
- 【セグメント情報】
次に、それぞれの項目、ページでどの点にフォーカスしてチェックするかを解説します。
企業の概要
【主要な経営指標等の推移】
連結と単体の主要な経営指標のデータ過去6期わたって俯瞰できます。上場企業の場合は子会社の業績を連結しているため連結のデータをその推移ともにチェックしてください。
チェックすべき重要項目は以下の通りです。
- 売上高
- 営業利益
- 経常利益
- 純利益
- (包括利益)
- 売上高営業利益率
- 営業活動によるキャッシュ・フロー
- 投資活動によるキャッシュ・フロー
- 財務活動によるキャッシュ・フロー
- 現金及び現金同等物の期末残高
以下にその概要を解説します。
売上や利益の内容を用語とともに正確に理解しよう。
売上高:売上高はその会計年度に計上した製品やサービスの販売金額の総計
- 売上高は就活生の皆さんが考えているイメージと同じ理解で良いです。企業が顧客に対し提供した財やサービスに対し、顧客がその企業に支払った額と考えてください
- 企業の内部取引に対する販売額を引いた、外部顧客に対する販売額こそが重要な売上高*となります
- *セグメント情報を参照してください
営業利益:(粗利)-(販売費及び一般管理費)
- 粗利・売上総利益:粗利とは売上総利益とも呼ばれ、売上高から売上原価を引いたものです
- 売上原価:売上原価とは、売上高と連動するもので、その内容は業種によって変わってきます。製造業の場合は、製造に必要な材料費や機器、製造ラインの人員の賃金、工場運営に要した経費などが原価になります。サービス業ではサービスを行う人員の人件費やそのために使用する消耗品等が主な原価を構成します
- 販売費及び一般管理費:販売費及び一般管理費は、販売手数料や広告費、間接部門の人件費、会社全体の福利厚生費、オフィスの家賃や機器の減価償却費、経費等が該当し、それらの費用の総合計です
営業利益とは、売上から売上原価を引いた粗利から、更に販売費及び一般管理費を引いた利益であり、一般的に本業で稼いだ利益と考えることができます
経常利益:(営業利益)-(営業外費用+営業外収益)
経常利益とは、営業利益から営業外費用と営業外収益の和を引いて計算した利益です。
- 営業外費用:営業外費用とは、企業の本業以外の活用から生じる費用のことで、具体的には支払利息・社債利息・有価証券売却損など、お金を借りた際の利息や社債を発行した時に必要な費用、株式の評価損や売却損などが主なものになります
- 営業外収益:営業外収益とは企業の主な営業活動以外の活動から生じる収益を指し、具体的には受取利息,受取配当金をはじめとする有価証券利息,有価証券売却益,不動産賃貸料,雑収入などが含まれます。企業の財務活動による収益が中心となるため金融収益または金融収入と呼ぶこともあります
税引前当期純利益:(経常利益)+(特別利益-特別損失)
税引前当期純利益とは法人税などの税金を支払う前の稼いだ利益であり、経常利益に特別利益を加えた額から特別損出を引いて計算します
- 特別利益:特別利益とは、本業とは関係の無いところで発生した、臨時的な利益を指し、臨時の利益を経常的に得られる利益と一緒にしてしまうと、企業の収益力を過大評価する恐れがあるため、別に区分するものです。具体的には不動産などの固定資産売却益、長期間保有した株式等の売却益、引当金の戻入益、前期の損益を修正する場合のプラス分等が該当します
- 特別損失:特別損失とは、企業が事業を展開していく上で通常発生しないが、その期だけ例外的に発生した損失を指します。具体的には不動産などの固定資産の売却損、長期間保有した株式等の売却損、災害(火災、水害、地震)によって建物が破損した場合、前期の損益を修正する場合のマイナス分等が該当します
純利益:税引前当期純利益-税金(法人税等)
純利益とは、税引前当期純利益から税金(法人税など)を引いて算出します。この項目の数字が、企業が最終的に稼いだ額、つまり儲かったか否かの判断基準として使用されます
当期純利益は、会社の財務分析において重要視される指標であり、前年度との比較や、競合他社と比較したりすることで会社の成長性を把握するのに使用します
包括利益: 当期純利益 + その他の包括利益
包括利益とは当期純利益にその他の包括利益を加えたもので、その他の包括利益を構成する要素は、投資有価証券等評価差額金(保有株式の時価差額)、繰延ヘッジ損益(為替・オプション等の金融商品の時価差額)、退職給付に係る調整額、為替換算調整勘定(海外子会社への投資後の為替変動)、保有土地の時価差額になります。
包括利益は国際会計基準によって作成が求められているものです。上場企業の中には包括利益を有価証券報告書に掲載していない企業もあります。(2020年4月現在、包括利益は会社法に基づく財務諸表への適用が義務付けられていない)
包括利益は、必ずしも事業活動と関連するとは限らず、一定期間における会社の純資産の動態的な増加分であり、「包括利益」を導入することによって、経営上の利益を市場のリスク動向に合った実態として把握するために近年導入された経営指標です。参考までに頭の片隅にいれておきましょう。
売上高営業利益率(%): 営業利益 ÷ 売上高
売上高営業利益率とは、売上高に占める営業力(本業)によって稼いだ利益の割合を示すデータです。
つまり、売上高営業利益率が高ければ本業の業績が良いと判断できる指標になります。一般的には、10%以上あれば儲かっていると言われています。
ちなみに、日本一平均年収が高い株式会社キーエンスの営業利益率は、50%を超え、驚異的に高い数字を誇っています。
営業活動におけるキャッシュ・フロー:
キャッシュ・フローとは企業の会計年度の期首と期末の資金の増減を見るものです。キャッシュ・フローには営業キャッシュ・フロー、投資キャッシュ・フロー、財務キャッシュ・フローの3種類があります。
特に重要なのが営業キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フロー)です。
企業はキャッシュ・フローを獲得するために営業活動を行っていると考えてもよいため、営業キャッシュ・フローがプラスであることにこしたことはなく、前年に比べて増加していることが、本業の好調を表すとされています。
しかし、企業規模が拡大している時などは、先行して支出が生じるケースがよくあることなので、営業キャッシュ・フローが一時的にマイナスや、減少傾向であることが、必ずしも悪いこととは言えません。
特に注意すべきは、営業キャッシュ・フローのマイナスの額が急に増えていたり、数年連続してマイナスであったり、連続して減少し続けていれば、その企業の本業で儲ける力が衰えていると判断することはできます。
営業キャッシュ・フローを見るときは中期のトレンドで見ていきましょう。
営業キャッシュ・フローに加え、投資と財務活動に対する資金の増減も把握しておきましょう。
投資活動によるキャッシュ・フロー:
企業が将来の利益獲得および資金運用のために設備投資や他企業に対する投資により、どれほどキャッシュを支出したか、固定資産や有価証券の売却等によってどれほどキャッシュを回収したかを示す情報です
投資活動によるキャッシュ・フローがマイナスの場合は、その企業は設備投資などに資金を積極的に回している可能性が考えられます。この項がマイナスの場合は将来への投資を行っている可能性が高いので、マイナスであっても単純に心配する必要はありません。後述する【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】の項目で、理由を確認してください。
ただし、営業活動によるキャッシュ・フローの範囲を超えていると、過大投資をしている可能性もあり、その場合はリスクが高い企業とみることができます
一般的には営業キャッシュ・フローと投資キャッシュ・フローの合計がプラスであることが企業の健全性を表すとされています
財務活動によるキャッシュ・フロー:
企業が資金を調達するには新規の借り入れや借り換え、社債の発行、新株の発行などが含まれます。資金の返済には借り入れの返済や社債の償還、株主への配当金の支払いなどが含まれます。これらの 財務活動によるキャッシュ・フローは、営業活動及び投資活動を維持するために、資金をどのように調達して、返済したかを示す情報と位置付けることができます。
企業が借金を返済するため現金を使用するとマイナスになります。事業の拡大や再編のために金融機関からの借り入れをしたり、社債や新株の発行をすればキャッシュがプラスになるので、その理由を確認しておきましょう。
一般的に上記の事業活動による3つのキャッシュフローで優良企業と考えてよいのは、営業キャッシュフローで、投資のための支出(投資キャッシュフローのマイナス)と借入返済(財務キャッシュフローのマイナス)を賄えている企業と考えてください。
現金及び現金同等物の期末残高:
現金及び現金同等物の期末残高とは、決算期末時点での 手許現金・要求払預金(当座預金・普通預金・通知預金)、や現金同等物(取得日から満期日または償還日までの期間が3ヶ月以内の短期投資目的の定期預金)などの残高を意味します。
期首で持っていた現金及び現金同等物の残高に、今期の営業活動、投資活動、財務活動のキャッシュフローを加えて期末時点の現金及び現金同等物の期末残高を計算します。
この現金及び現金同等物の金額は、金額の大きさとともに過去からのトレンドで見ていきましょう。年々増加している企業は健全性が高く、成長している企業です。
減少トレンドが継続していたり、急激に減少があると要注意であると考えてください。
【事業の内容】
事業の内容では、企業がどんな事業を、どのように行っているかを把握します。ほとんどの企業が複数の性格の違う事業を行っており、顧客や提供する製品、サービス内容の違い、展開地域、子会社ごとの違いを理解することができます。
その違いは、事業セグメントに分けられていることが一般的であり、事業セグメントごとの重要度も理解できます。
【従業員の状況】
事業セグメントごとの従業員数を知ることができます。また提出会社(単体)の従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与等を知ることができますが、提出会社がホールデング会社の場合や現業社員を含む平均である場合の見分けがつきにくいため、平均勤続年数や平均給与は就職四季報のデータを参照することをお勧めします。
ここではセグメントごとにどのくらいの人員を張り付けているかをみておきましょう。後半で説明するセグメント毎の売上や利益との関係を見ていきます。
事業の状況
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
経営方針、企業理念、中期経営計画の概要と業績の推移、企業の過去数年、今決算年度に起こったこと、将来への見通しと何に注力して業績を伸ばしていくかの方向性、人材育成方針を理解することができます。
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
主な経営指標等の推移の説明が、経営者視点で解説されています。なぜ、今期の決算が、上記の様な結果となったかの概要を知ることができます。
ななめ読みで、自分が特に気になった点をメモするか、マーカーで後から見るようようにしておきましょう。
【研究開発活動】
企業の研究開発、技術開発に対する現状と姿勢、未来へのビジョンを知ることができます。この項目は同業他社との比較において、研究開発や未来への投資をどのように考えているかを把握します。
また研究・技術開発の人材育成に対する考え方もチェックしておいましょう。
提出会社の状況
【大株主の状況】
大株主の構成を知ることができます。経営者が筆頭株主や大株主(その比率)なのか、ある企業のグループ会社なのか等の企業の性格を株主構成から理解することができます。
経理の状況【連結財務諸表】
- 【連結貸借対照表】
- 【連結損益計算書】
- 【連結キャッシュ・フロー計算書】
- 【セグメント情報】
特に会計の知識がない方でも、貸借対照表からは【自己資本比率】は簡単に計算できます。自己資本比率は企業の安定度をみる上で重要な指標です。貸借対照表の読み方が良くわからなくても、自己資本比率はチェックできます。
自己資本比率
自己資本比率とは、会社の総資本に対する自己資本(純資産)の割合を示すものです。自己資本とは、返済する必要のないものであり、貸借対照表は右側の純資産合計の金額になります。
それに対し、他人資本とは返済したり、払わなければならないもので、流動負債(支払手形、買掛金、短期借入金等)と固定負債(長期借入金や社債等)で構成されその合計が貸借対照表の右側の負債の部の金額になります。この負債と純資産の合計が、貸借対象表の左側に当たる資産の合計と同じになるのが貸借対象表(バランスシート)です。
つまり自己資本比率とは、自己資本が資産に占める割合を示すものであり以下の計算式で求めることができます。
- 自己資本比率=自己資本÷資産(他人資本+自己資本)×100
自己資本比率は産業によっても差があり、一概に高い、低いは比較できませんが一般的には30%~40%以上であれば安定した企業と考えてよいとされています。
自己資本比率が10%以下の場合は、負債の割合が高いことを意味します。多くの場合赤字や借金などが膨らんでいることを示しており要注意です。
自己資本比率がマイナスの場合は負債が資産の総額を上回る債務超過の状態であり、倒産のリスクが高い企業と考えましょう。
企業の安定性は自己資本比率だけでは測れず、あくまで一つの指標です。キャッシュ・フローや現金及び現金同等物の期末残高のトレンドも併せてみていきましょう。
損益計算書は、本記事の解説だけでも主要なポイントは把握することができます。キャッシュ・フロー計算書もこの記事の説明で、概要は理解できると思います。余裕があれば目を通し、気になる点があればメモしておきましょう。
注目すべきセグメント情報
就活目的で、有価証券報告書をチェックする際に重視してほしいのがこのセグメント情報です。
前期と当期の事業セグメントごとの売上高(外部顧客への売)げと営業利益をみることができます。
この情報によって、その企業のなかで、どの事業が売上高と営業利益に貢献しているかの貢献具合の概要をつかむことができます。
このセグメント情報が重要な理由は、その企業の中で売上高が高く、売上構成比が高い事業でも、営業利益が小さかったり、マイナス(赤字)である場合などがよくあるからです。
上場している企業でも、社名からくるイメージや目に見える事業活動と実際に稼いでいる事業の実態に乖離があることも多いのです。
就活は将来に大きな影響を与えるイベントです。イメージや先入観にとらわれると、将来を見間違う可能性もあるため、企業の現状をしっかりしたデータで把握しておきましょう。
セグメント情報は、その企業の現在の実態を表している極めて重要な情報なのです。企業によっては有価証券報告書の事業の状況の中で、セグメント別の売上、利益を丁寧に説明している場合もありますが、意外なほどセグメント情報を前半で詳しく説明していない企業も多いものです。
単一セグメントの企業であれば理解できますが、ほとんどの企業は複数のセグメントで事業を行っています。
【就活の答え】では一貫して、セグメント情報を重視した情報提供を行っています。多くの場合100ページより後ろに掲載されており、目次の項目にも出していない企業も多いので見つけにくい情報です。
【就活の答え】の読者は、セグメント情報までしっかり押さえて的確な企業選択をしていきましょう。
まとめ
この記事に従ってポイントを把握していけば、1時間もあれば企業の有価証券報告書による客観的な企業分析が可能になります。
上場企業に限られますが、非上場企業の場合でも決算をWEB上で閲覧できる企業も多いので、「企業名+決算」や「企業名+貸借対照表 損益計算書」などで検索してみてください。
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