コンサルティング・ファームへの就活を第一志望としている方は、「ケース面接」とは何かを理解し、既に例題、練習問題を使ってその準備をしている方も多いかと思います。
コンサルティング・ファームへの就活では、「ケース面接の出来によって採用が決まる程重要」な面接です。
一般の就活生は「ケース面接」という言葉すら聞いたことがないかもしれません。またコンサル業界に少し興味がある程度の学生や、志望順位の低い場合は「何となく知っている」、あるいは「名前だけは聞いたことがある」という感じでしょうか。
コンサルティング・ファームへの入社を真剣に目指している人以外でも、「ケース面接」の基本の考え方、組み立て方を知っておくだけでも、面接で「地頭の良さ」をアピール出来たりグループ・ディスカッションやグループ・ワークでチームの議論をリードすることが可能になります。一般の就活生でも、大いに応用が可能、知っていくことの価値は大きいのです。
この記事では、主に「ケース面接」を良く理解していない学生に向けて、ケース面接の基本を解説していきます。
Contents
ケース面接とは何か
ケース面接は、「課題に対し、その解決のための仮説を立て、解決策を導き出すこと」を問う面接です。
戦略コンサルティング・ファームの場合は、日常の仕事でクライアントでは解決できない課題に取り組むので、まさにコンサルタントとしての素養・素質を測るためにこの面接方式を導入しています。
一般企業の場合でも「問題解決能力」、「論理的思考能力」や「人に分かり易く伝える能力」は重視されています。それに加え、協調性や対人能力をプラスしてチェックするのがグループ・ディスカッションやグループ・ワークになります。
GD/GWの「課題解決型」のテーマは、ケース面接で出されるテーマと構造は同じです。ケース面接の場合は、一人で(面接官と会話をしながら)解決策を導き出すのに対し、GD/GWではチームで話し合いながら、チームとしての最善と思われる結論(課題の解決)を導くのです。
ケース面接とGD/GWの課題では、難易度に差はありますが解決策を導く基本的なアプローチは同じです。
ケース面接の場合は一般的に20分から40分の所要時間になり、面接官からテーマを与えられた後、その課題をどのように捉え、考え、解決策を導くかを冒頭5分程度で一人で考えることになります。
そこで考えたアプローチを面接官に説明しながら、最善の解決策を構築していくフローです。
GD/GWの場合はみんなで考えを持ち寄り、最善と思われるアイディアを集約しながらチームとしての解決策を導きます。
ケース面接の基本を理解することを目的とし、具体的に分かり易い身近な課題を例題に設定して、アプローチの方法を解説していきます。
課題:新型コロナ・ウイルスの影響で売上が8割減のイタリアン・レストンの売上を回復させるにはどうすれば良いか
面接官から「新型コロナ・ウイルスの影響で売上が8割減のイタリアン・レストンの売上を回復させるにはどうすれば良いか」を考えてほしいというリクエストが出されました。
この記事を読み進む前に、あなたなら、どんな順番でこの問題の解決策を考えるかを2-3分でも良いので考えてみて下さい。
多くの人が、具体的なアイディアを思いつこうと考えるのではないでしょうか?「料理の値段をディスカウントしてみる」、「チラシやポスティングをしてみる」等々です。
しかし「ケース面接」でも「GD/GW」でもいきなり具体的なアイディアを考えるのはNGです。
最善の解決策を導くには、以下のフローでロジックを組み立てる必要があります。
ケース面接の課題に対するアプローチ方法の基本を理解しよう
- 課題の前提と条件を決める・確認する
- 明確な目標を設定する・確認する
- 課題解決の戦略を考える
- 戦略に従って課題を解決するための実行プランを考える
- 実行プランの有効性を評価して、プライオリティをつけて解決策を絞り込む
それでは順番に解説していきます。
課題の前提と条件を決める・確認する
今回のテーマ、「新型コロナ・ウイルスの影響で売上が8割減のイタリアン・レストンの売上を回復させるにはどうすれば良いか」だけでは情報が足りません。情報が足りないために解決策に大きなぶれが生じます。
ケース面接やGD/GWで細かく条件が設定されている場合は、それに従って足りない部分を仮説で補い、思考していきます。
そのような細かい条件が設定されていない場合は、自分で条件を設定し、それを基に仮説を展開していくことになります。
この設問で、有効な解決策を提案するために少なくとも必要なものは、店舗の規模(1日の売上)、立地、競合状況、営業形態、未だに新型コロナ・ウイルスの問題が継続しているという事実確認です。
例えば、以下を前提として、有効な解決策を考えることとします
- このイタリアンレストランの1日の平均売上:10万円(平常時)
- 東京郊外の1店舗で半径500 m内に競合するイタリアン・レストランはない
- 半径500 m内に宅配ピザの店舗が1件ある
- 店内の飲食のみでテイクアウトは未実施
- 新型コロナ・ウイルスの影響で外出や外食の自粛要請が継続中。営業時間も夜8時までに制限されている
明確な目標を設定する
この設問のままでは「売上回復」のゴールが明確ではありません。目標が明確に設定されていれば、それに従って考えるだけですが、定義がされていない場合は、自ら以下のような「売上回復」の目標を設定します。
- 「売上回復」は現状平常時の8割減の売り上げを4割減のレベルとして固定費と材料原価をカバーする
今回は平常時の1日の平均売り上げが10万円の店舗なので、現状2万円に減ってしまった売り上げを6万円にまで戻す戦略と具体策を考えることにします。
この「売上回復」の定義はとても重要です。売り上げを平常時の100%に戻すことを前提にすると、実行プランやそのプライオリティが違ってきます。
課題解決の戦略を考える
この設問では、売上減少の原因が新型コロナ・ウイルスの影響と特定できています。いったん立ち止まって、レストランの売上げを因数分解してみます。
レストランの売上を構成する要素は以下のように因数分解できます
- 客数 X 客単価
更に細かく分解すると一日当たりの客数は(一組当たりの平均来店人数 X 平均来店組数)に分解でき、客単価は(1品当たりの平均購入単価 X 購入点数)に分解できます。
*この設問では、1日当たりの平均売り上げの回復を課題にしています。課題が月の売り上げであれば、客の来店頻度や新規顧客の流入数などの変数も考慮しますが、分かり易くするために1日当たりの売り上げで設定しています。一日の場合、同じ人が複数回来店して飲食することは考えにくいため、来店頻度は無視して考えます。
次にこの課題を構造的に考える必要があります。この売上減少の問題、現状がどのような構造なのかを考え、そのボトルネック(問題の原因)を特定します。
この場合は新型コロナ・ウイルスの影響が原因で、外出自粛要請、不要不急の会食などの自粛や営業時間の短縮がその原因であり、新型コロナ・ウイルスの問題が劇的に改善されない限り、現状の営業形態である店内飲食を前提とした解決策では限界があることは少し考えれば分かります。
この条件下で売り上げ回復をするためには、「三密」を避けなければならないことから、店内消費を前提としない解決策をとるべきであるという仮説を置いて、思考を進めることにします。
次に考えるのは、この戦略に従った実行プランです。
戦略に従って課題を解決するための実行プランを考える
レストラン業態において、蜜を避け、店内消費を前提としない有効・有力なな解決策の一つはテイクアウトです。打ち手を「テイクアウト」の開始とテイクアウトの販売促進という方向で具体的にアイディアを出していきます。
一例ですが、以下のような実行プランを出すことになるでしょう。
- イタリアン・レストランで、一番テイクアウトに適したメニューはピザであるため、テイクアウトはピザに限定して効率化を図る
- 学校の休校や在宅勤務となり、昼間家に人がいる確率が高いため、ランチの時間帯に最大限注力して、画一的な割安のピザで販売量を確保する
- デリバリーでは宅配ピザ店に勝てないため、宅配ピザ店のテイクアウト価格を参考にして、宅配ピザ店のテイクアウトより安価で、買いやすいピザメニューを開発する
- 昼間の時間帯は、一人用で充分な量があり、ワンコイン(500円)で買えるメニューを開発する
- 夜の時間帯は、豪華なピザ、自由にトッピングを選べるピザを加えて注文単価を上げる
- テイクアウトのオペレーションが店舗の外から充分視認できるPOPを設置し、ドアを開放して入店しやすい雰囲気を演出する
- 近隣の住宅、マンション、オフィスにチラシのポスティングや、割引クーポンを配布する
- 等々
この段階で、はじめて具体的な実行プランのアイディア出しをすることによって、面接官にも論理的な思考力、思考の筋の良さをアピールすることができるのです。
何も前提条件が無い状態で「ワンコインのピザメニューを作ります」と言っても、単なる思いつきにしか聞こえないので注意してください。
実行プランの有効性を評価して、プライオリティをつけて解決策を絞り込む
最後に行うのは実行プランの評価とプライオリティづけです。
「平常時の売り上げの2割まで減った売上を平常時の4割減のレベル(平常時の売上の6割)まで戻す」ためには、どの実行プランを選び、どのプランから手を付けて実施すべきかを考えることになります。
- ここではまず、現状の2割(2万円)の売り上げの構成を想定して考えることにします。客単価はランチタイムが800円、ディナータイムが1200円と仮定すると、昼、夜、10人ずつ、合計20人の客が利用している仮説をおきます。
- 新型コロナ・ウイルスの影響下では、店内飲食客は増え難いため現状をキープすることを戦略にします。店内飲食売り上げキープを目標に置くと、単価の高い夜の時間帯にテイクアウトで競合してしまうのは避け、夜の店内飲食売り上げはそのまま守ることを目指します。
- その前提に立つと、昼間の時間帯の店内飲食売り上げがそのままの8,000円キープできると考えると、残りの40,000円を昼間のテイクアウトで稼げばよいということになります。
- ランチタイムの客単価は800円と同じにすれば、テイクアウトと店内飲食の価格差は消費税の2%の差だけになるため、お互いに需要を食い合うことはないと考えます。
- 客単価が同じ800円で、差額の40,000円を売り上げるためには、ピザ50枚をテイクアウトで販売すればよいという計算が成り立ちます。
- 次に、ランチタイム中にピザ50枚を提供できるかの、打ち手の実現可能性を検証します。
- ピザ50枚が店内で消費される場合、4人掛けのテーブル席が6席ある店舗と仮定すると、満席(4人X 6卓 = 24人)がランチタイム中に約2回転する量ということが分かります。
- 通常の店内飲食の場合は注文に応じて様々なメニューを作ることになり、満席2回転では厳しいかもしれませんが、つくるメニューをピザに集中させることができるため、オペレーション上も十分可能である数量であることが分かります。
- また昼間のピークタイムが2時間半と考えても、あらかじめ電話やネットで注文を受けつけることにより、時間を読み込み、オペレーションの分散が可能であるという点も見えてきました。
- 次に500円メニューの開発をするかどうかの検討ですが、現状の800円の客単価の低下を招くリスクを考慮すべきであると考え、直ぐには実施しないことに決定しました。
- 800円を大幅に下回るメニューは、平常時に回復した後の来店客数に悪影響を与えることも想定しました。
- 500円ピザは800円のテイクアウトを実施した後、数量が計画に満たない場合のオプションとして、数量限定、もしくは女性限定の一人用メニューとするべきというオプション提案とします。
- 単価800円は宅配ピザのテイクアウト金額にも十分対抗できる金額であるため、800円をテイクアウト単一価格とし、テイクアウトピザの種類は5種類限定で、分かり易さを前面出すことにします。
- 店頭POPとチラシは手作りでコストを掛けず、オペレーション開始の前日に実施します。
上記は実効プランの評価とプライオリティ付けの一例ですが、理由をつけて説明することが重要です。それが無い場合は、必ず面接官から「何故、そう判断したのか」が問われます。
また、面接なので「別の見方をすると、そうとは言えない」あるいは「他の理由は?」等の鋭い指摘が待っています。ケース面接では、それらの「鋭い指摘」に対するリアクションも評価の対象になります。
難易度の高いケース面接への準備をしておこう
上記の例はケース面接の基本を分かり易く説明するために、難易度を下げて設定しています。課題も売上がテーマなので。考慮すべき変数も少ないのでやり易いのです。
ケース面接の実際のテーマは以下のような類型となります。
- フェルミ推定をしてから、その上で仮説を展開するパターン(例:日本の床屋の売り上げを20%増やす方法を考えよ)
- 二社択一で結論を出す課題(例:カジノを日本で営業するべきか、否か、移民を受け入れるべきか、否か)
- 売り上げを増加する課題
- 利益を増大する課題(売上向上とコストの低減の両面考察が必要。コストも固定費と変動費に分けて考える)
- 新規事業を提案する課題(例:ユニクロが行う新規事業を提案せよ)
- 社会問題を解決する課題(例:テレワークを増やすための戦略提案)
上記のイタリアン・レストランの例で「利益」がテーマになっている場合は、少なくともピザのテイクアウト用のボックス費用のコストを考える必要が出てきます。
「ケース面接」の難易度が上がると、それに対応する特別な学習、例題の演習という訓練が必要になります。
コンサルティング・ファームを志望する方は、この「ケース面接」の演習は絶必になります。ケース面接やロジカル・シンキングの専門書も数多く出ていますので、学習しながら友人や先輩と実戦形式の練習を重ねていってください。
「ケース面接」でのアウトプット(結論や提案)そのものもの妥当性は評価の対象ですが、それより重視されるのは志望者の「考えることが好きかどうか」、「洞察力」、「論理展開」、「柔軟な思考ができるか」という側面であり、「解決策の筋の良さ」、「筋の良い思考ができる能力」ということになります。
ケース面接には対人能力とコミュニケーション能力も重要
ケース面接はコンサルタントや有能なビジネスパーソンの素養である、論理的思考能力を測るだけではありません。
面接なので、当然面接官の発言を傾聴し、適切かつ的確な応答ができるかもチェックされます。面接官は時にはあなたの立てたロジックを批判し、場合によってボロクソに反論することさえあります。
あなたに求められるのは、「どういう場合でも冷静にゴールを目指す資質」や面接官と適切に会話をして、建設的に提案をまとめられるかという「対人能力」も重要です。
また、自分の論理や戦略、提案を、分かり易く相手に伝え、説得するコミュニケーション能力を問われます。
どんなに優れたロジックや提案でも、相手に上手く伝えることができなければ、「提案をお買い上げいただけない」ということになってしまうからです。
クライアントをはじめとして、人に適切に対応できる能力や表現力、プレゼンテーション能力というコミュニケーションのチカラも評価の対象であることも留意して練習をしていきましょう。
まとめ
- ケース面接とは「課題に対し、その解決のための仮説を立てて解決策を導き出すこと」を問う面接
- ケース面接の課題に対するアプローチ方法の基本を理解しよう
- 課題の前提と条件を決める・確認する
- 明確な目標を設定する・確認する
- 課題解決の戦略を考える
- 戦略に従って課題を解決するための実行プランを考える
- 実行プランの有効性を評価して、プライオリティをつけて解決策を絞り込む
- コンサルティング・ファーム志望者は難易度の高いケース面接への準備と練習は必須
- ケース面接には対人能力とコミュニケーション能力も重要
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