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構造化面接って何?就活生が知っておくべきことを分かり易く解説

大(院)卒の就活生でも、「構造化面接」について知識がある方は少数でしょう。

企業の採用面接には、様々な方法があります。「構造化面接」もその一つの面接方法です。

大(院)卒新卒向けの就活本や就活Webサイトでも解説がほとんどないため、「特別にケアしておかなくても良い」と思うかもしれません。

確かに日本企業で「構造化面接」を完全に採用している企業は殆どないのが現状ですが、構造化面接の手法を面接の一部に組み込んでいる企業は多く、また増えてきています。

人事コミュニティでは、「構造化面接は、Googleが行っている採用面接の方法」として注目を集めていること、また日本企業が伝統的に行ってきた採用方法・面接方法では競争力を担保できないという課題が表出しているという背景から、「構造面接の手法」を採り入れていこうという傾向がでてきました。

従って「構造化面接」とはどういうものなのかを知っておくことは、決して無駄にはなりません。

構造化面接とは、どういう面接方法なのか?

構造化面接とは、同じ企業、職種・職務を志望するすべての求職者に対し、全く同じ質問をあらかじめ決められている手順通りに行い、その回答に対して事前に決められている基準による採点方法によって評価を行い、事前に決めた採用要件を満たした場合は採用、満たさない場合は不採用とする面接方法です。

つまり、面接官の主観的な評価や判断をできる限り排除する面接方法です。

ここまで読んだ就活生の皆さんは、「これは確かに日本企業に向いていない面接方法だな」と思うでしょう。

日本企業の大(院)卒の新卒採用は、「総合職」もしくは「一般職」採用が伝統的な採用方法であり、面接方法も、どんな質問を個々の志望者にするかは、面接官の自由裁量の余地が非常に大きいのが特徴です。

日本企業の大(院)卒の新卒採用面接で面接官を務める社員や役員は、基本的には「自分は人を見る目がある」という自負を持って面接に臨んでいます。

組織の中でリーダー的な役割を担っている若手社員や、部下の育成が上手く組織が機能しているマネージャー、課長クラスの社員、面接が数次にわたり初期~中間段階の面接を行い、後半から最終になると部長や事業部長、取締役クラスが面接官を担当するのが一般的な例です。

そのすべての社員や役員は、会社から「面接官を担当してくれ」と依頼されているのであり、その裏には「あなたは人を見る目がある」、「面接が上手い」と会社が判断しているからという認識や自負があるのです。

このように有能な社員や役員の属人的な評価に依存する今迄の面接方法には、以下のようなデメリットがあります。

  • 初対面の志望者の基本属性と第一印象によって、面接で質問する内容、評価が左右されてしまう
  • 評価が能力より人格や人間性を重視・評価する傾向になる
  • 個々の面接官の無意識のバイアス(偏見や先入観、感覚的な好き・嫌い)を排除できない
  • 個々の面接官の信念や成功体験、部下との関係性や育成体験によって評価が決まってしまう
  • 個々の志望者に対して、バラバラな質問が行われるため、そもそも評価の公平性が担保できない(志望者にとっては、不公平な面接となる)
  • 長期間に渡り同じような採用方法を執ってきた結果、全体として人材の均質化が起こり、それが強みであった時代もあったが、現在のゲーム(ルール)で勝てなくなっている

日本企業の面接は、数次に渡って企業の様々なレイヤーの面接官の評価を通過させることによって、上記のデメリットを消し、自社に最適な人材を採用できるとしてきました。

大(院)卒人材は「総合職」として採用した後、様々な部門や役職を経験させながら、長期間でジェネラリストとしての管理職を育てる人事戦略をとってきました。この戦略には、経験的にも能力より人格を重視した採用方法の方が適しているという判断があります。

能力は入社後じっくり磨いて人を育てるという考え方です。

しかし、変化のスピードが速く、不確実性が増している「VUCA*」の時代では、日本企業は、総合職としての採用や育成スピードでは、競争に勝てなくなってきているという現実にも向き合っているのです。

*Volatility(変動制)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の略

特にビジネスのグローバル化とデジタルトランスフォーメーション(DX)が企業の成長に不可欠な時代では、専門人材や少なくともその能力が確実にある人材を採用する「職種別採用」や専門能力を重視した「ジョブ型採用=設定した要件の仕事(ジョブ)ができる人材を採用する採用方法」の必要性が高まっています。

構造化面接は、面接官の主観を極力介在させず、志望者の「思考特性や行動特性」と「能力」によりフォーカスを絞って公平に評価する方法のため、職種別採用やジョブ型採用に適した面接方法であると位置づけられています。

ミスマッチと早期退職問題

更に、採用・入社後のミスマッチによる早期退職も企業にとっては大きな問題です。

総合職で新卒人材を採用した場合、中長期のスパンで育成、成長して企業にとって採用コスト(時間と費用)を上回る利益をもたらしてくれなければ、その採用辞退意味がありません。

意味がないばかりではなく、機会損失として、マイナスになるのです。

ここ十数年来、大(院)新卒の入社後年以内の離職率が全国平均で3割程度が続いていることを知っている人もいると思います。

企業視点に立つと、大(院)新卒にかけた、採用コストの1/3以上(時間と費用:入社後の給与や育成にかかるコストを含めない場合でも)を、ドブに捨てていることになっているのです。

入社後、辞めるまでの給与や育成に係る時間と費用を考えれば、その損失の重大さが分かると思います。

ごく一部の、若手人材の使い捨てを前提とて採用を行っている企業を除き、この損失も大きな問題です。

簡単に言うと、伝統的に行ってきた面接方法を含む採用方法が、上手く機能しなくなってきているのが現実です。

それを打開したいと思っている企業も多くいため、「構造化面接」や一部でもその方法を採り入れて採用方法を進化させたいという企業が多いのです。

自社に適合する競争力のある人材を採用し、早く利益の創出に貢献してほしいと考えるのは、どんな企業も、いつの時代でも同じです。

問題も露呈し、課題も明らかな現状の採用方法を、改善する一つの方法として「構造化面接」とその手法が注目されているのです。

人材の多様性と国際競争での競争力を強化するために

日本市場の未来は人口減少と、少子高齢化の社会であることは統計上明らかであり、それが加速していることはどんな企業経営者でも認識しています。

簡単に言うと、どんな産業でも、日本市場の限界は明らかなのです。

もちろん、だからといって日本市場で成長できないということではありませんが、日本市場だけでは大きな成長は期待できないのが現実です。

故に海外市場の重要性が一層増すことは自明です。

海外市場で勝ち残るためには、海外人材の活用が不可欠であり、海外人材もマネージメント、経営幹部として力を発揮してもらう必要があるのです。

市場に最適化した組織を構築するためにも、変化が激しい時代に適合していくためにも、国籍を問わず、能力重視で多様性のある強い組織が必要になります。

人事戦略や採用戦略も、多様な人材の活用、グローバル人材の採用に向け、能力と公平性を重視した採用を行う傾向が強くなっているのです。

その意味で、面接官を務める社員個人の主観に依存している現在の採用方針・面接の方法も、能力と公平性を重視して見直す必要があるのです。

日本企業でも特に事業をグローバル展開している企業は、今までの伝統的な採用方法・面接方法を見直し、「構造化面接」の手法を面接プロセスに組み入れはじめています。

構造化面接を構成する質問

構造化面接とは、同じ企業、職種・職務を志望するすべての求職者に対し、全く同じ質問を行いますが、大きく分けて2種類の質問で構成される面接方法です。

「過去の行動についての質問」と「仮説に基づく状況についての質問」の 2 種類です。

過去の行動についての質問

行動についての質問は、志望者の過去の状況にどういう考えに基づいて、どんな行動をしたかについて聞く質問です。

例えば以下のような質問です。

  • 「あなたはその集団の中でどのような役割を担っていましたか」、「あなたが〇〇チームに良い影響を与えた事例を教えてください」等

どんな主題になるかは、企業ごと、採用部門ごとに綿密に計画・設計されるため、予測はできませんが、あなたが過去に行った事に対して、あらかじめ決められた順番で深堀質問をされるフォーマットは共通しています。

過去の経験を聞く質問では、上記の起点になる質問と、以下のような掘下質問(フォローの質問)が展開されます。

  • チームでの役割の例
    • なぜそのチームに所属しようと思ったのか
    • チームの中ではどんな役割を担っていましたか
    • チームはどんな目標を設定したのですか
    • 何故、その目標に設定したのか
    • その目標に対して、どんな取り組みをしたのですか
    • 目標達成に対してどんな問題がありましたか
    • 問題解決のためにどういう課題がありましたか
    • 取り組みの中で最も大変だった経験は何ですか
    • それをどう乗り越えたのですか
    • どういう結果が出ましたか
    • あなたはメンバーにどんな働きかけをしましたか
    • メンバーはどう反応し、あなたはどう対応しましたか
    • その働きかけをしようと思ったきっかけは何ですか
    • その行動で発揮されたあなたの強みはありますか
    • 何故、そう言えるのですか
    • その行動から何かを学びましたか
    • もし同じ問題が起こったとしたら、どう取り組みますか

上記はあくまで例であり、これと同じ質問が繰り出される訳ではありません。各企業で必ずするべき質問、する内容と順番、パターンが決まっているのが普通です。

一般的に過去の行動についての質問は、「Situation(その時の状況)」、「Task(課題)」「Action(行動)」「Result(成果)」の4つの観点からの質問で構成されていることが多いです。(STAR面接と呼ばれることもあります)

答える時も、その4つの観点で整理して、その理由・根拠を加えて説明すると良いでしょう。

どこまで掘り下げるか、どのポイントを中心に掘り下げるかも決まりはありません。

各企業が自社や部門で活躍している人材の思考パターンと行動特性を分析した結果、最も重視したい行動特性や能力にプライオリティをおいて質問内容、順番(フロー)とスコアガイドラインを考え、事前に決定を行います。

決定したものをテストと面接官のトレーニングによって改善、精緻化を行なった後に実施します。

質問に対する答えの内容によって、明確に「優れた回答」、「良い回答」、「どちらとも言えない凡庸な回答」、「悪い回答」等のランク付けを行います。どういう回答内容がそのランクに当てはまるかの要件と、それぞれの回答例が文章によって明確になった資料を準備して、それに従ってスコアをつけていきます。

上記は構造化面接の一般的な設計・実施方法ですが、この方法により、面接官の主観やバイアスが入り込む余地が極めて少なくなるのです。

仮説に基づく状況に関する質問

もう一つの質問パターンが、「もし、○○という状況になったら、あなたはどうしますか」という仮説に基づいた状況が設定され、その状況に対して志望者がどのように考え、どのように行動するかを聞く質問になります。

この場合もどんな主題になるかは、企業ごと、採用部門ごとに綿密に計画・設計されるため、予測はできません。

人事部や各部門のキーパーソンが、その企業や部門で求められる思考パターン、判断力とそれに基づく行動パターンを分析、合意してスコアのガイドラインを設定します。

当然企業毎、あるいは部門毎で質問も採点・評価基準も違います。

例えば以下のような質問です。

  • 取引先から「上司に相談せず、あなたが今決めてくれたら契約する」と言われた場合、あなたはどう判断し、どんな行動をしますか?

仮説に基づいた状況に関する質問も、あらかじめ決めてある質問の手順と内容に従って面接が進んでいくのです。

上記は未だ本格的に仕事をしていない新卒での志望者には答え難い質問かもしれません。新卒向けに行われる場合、学生でも答えられるレベルの状況設定であなたの思考パターンや行動特性をチェックされます。

  • 新卒者向けの状況質問の例
    • あなたが今まで、全く経験したことのない仕事を上司から依頼された場合どうしますか
    • あなたが想像もしていなかった部門に異動を命じられた場合、どうしますか
    • 顧客からのクレームを担当者であるあなたが直接受けた場合、どうしますか
    • 等々

仮説に基づく状況に関する質問も、過去の行動に対する質問と同様、企業や部門が求める人材の思考パターンと行動特性に基づいて、最も重視したい能力と行動の評価項目、評価基準を明確に決められます。

事前に準備された質問、質問の順番、スコアガイドに従って評価されることも同様です。

構造化面接の現状

大卒・院卒の新卒採用で、完全な構造化面接を実施して、それのみで合否を決めている企業は殆どないと言ってよいでしょう。

構造化面接は、面接官の主観やバイアスを排除できることや公平性の高い評価が可能なこと、自社や部門に望まれる思考パターン、行動特性、能力基準に基づいて人材を評価できること等のメリットがある反面、志望者との人間的なコミュニケーションが希薄になり、人間性や人間的な魅力、熱意や意欲といった定性的な評価がし難いというデメリットがあります。

構造化面接を受けた志望者は、担当した面接官の能力や主観に依らず、バイアスも排除されるため公平・公正なジャッジが行われるという積極的な評価がある一方、「人格が評価されない」、「マニュアル的で、機械的な印象を受ける」、「一人一人の個性や、良さが評価されにくい」等の否定的な評価もあることは事実です。

また本格的に「構造化面接」を導入・実施するのは手間と時間がかかり、精緻化するにはテストや面接官のトレーニングも必要です。

日本企業の総合職採用では、一般的に明確に定義された特定の能力より、全人格的な性格や能力のバランスの良さなどを評価する傾向が強いことや、キャリア採用はともかく、新卒採用には向いていないのではないかという意見もあるため、「構造化面接」のメリットを理解しつつも、構造化面接の本格導入に至っていません。

構造化面接を行っている企業でも、現状はあらかじめ準備した「全員に聞く、起点になる質問」と「起点の質問についてのフォローの質問(深堀質問)」、「その質問に対する答えの評価基準」を明確にしたパートを面接の中に設け、それ以外は面接官の自由裁量で質問を展開していくという、部分的な導入を行っているのです。(半構造化面接の実施)

多くの企業が半構造化面接とも呼ばれているこの手法を導入していますが、その場合でも構造化面接パートがどこまで厳密に設計され、精緻化して行われているかは企業ごとに差があります。

 これからの就活生に必要なこと

現在の新卒採用面接では、構造化面接と呼べるほどシステマチックに設計されているか、否かは別として、「起点になる質問」と「その質問に対するフォローの質問(深堀質問)」のフローによって進められるのが普通です。

例えば「ガクチカ」で「男子ラクロス部での活動」を取り上げた志望者に対して、以下のように、かなり突っ込んだ深堀質問がある場合は、「構造化面接の過去の経験に関する質問」もしくは能力を重視した「コンピテンシー面接*による質問」と考えた方が良いでしょう。

*コンピテンシー面接に関しては別の記事で解説しているので、参考にしてください。

  • ガクチカ:「男子ラクロス部での活動」をテーマにした志望者に対するフォローアップ質問の例
    • なぜ部活をしようと思ったのか
    • なぜラクロス部を選んだのか
    • ラクロス部の中での役割
    • ラクロス部では、目標を設定したか
    • 何故、その目標に設定したのか
    • その目標に対して、どんな取り組みをしたのですか
    • 取り組みの中で最も大変だった経験は何ですか
    • それをどう乗り越えたのですか
    • どういう結果が出ましたか
    • あなたはメンバーにどんな働きかけをしましたか
    • メンバーはどう反応し、あなたはどう対応しましたか
    • その働きかけをしようと思ったきっかけは何ですか
    • その行動で発揮されたあなたの強みはありますか
    • 何故、そう言えるのですか
    • その行動から何かを学びましたか
    • もし同じ問題が起こったとしたら、どう取り組みますか
    • それ以外に何かをしようと思わなかったのですか

深堀質問がここまで繰り返されないにしても、通常の面接で、2~3問の深堀質問があるのは普通のことです。

従って、「構造化面接」とはどういうものかを理解しておくこと、その対策を考えておくことは決して無駄にはなりません。

更に言えば、日本の大企業が、能力重視のジョブ型採用への移行を見据えているため、「構造化面接」への対応力を増す重要性は高まっていくでしょう。

企業毎、部門ごとで求める人材の採用基準とその評価基準が違うため、質問を予想するのは不可能ですが、できることはあります。

以下を参考にして、対応力を強化しましょう。

  • 志望する企業もしくは部門の求める人材の要件を研究すること
  • 少なくともESに記載した内容に関しては、突っ込んだ深堀質問があるものと想定して、「Situation(その時の状況)」、「Task(課題)」、「Action(行動)」、「Result(成果)」と自分の主張の理由・根拠を答えられるようにしておく
  • 行動や成果に関しては自分の「強み」や「能力」に繋げて答える
  • 仮定に基づく状況についての質問は、求める人材の要件を持つ人は、このような場合、どんな考え方をして、どんな行動をするかに頭を切り換えて答える

つまり、構造化面接の対策も、一般的な採用選考面接の対策の延長線上にあるのです。通常の面接対策としても効果があります。

一般的な採用選考面接でも有能な面接官は、深堀質問によってあなたの思考パターンや行動特性、本当の能力を見極めます。

質問から評価までシステマチックに規定されているか、面接官の経験や力量にって行われ属人的に評価されるかの違いはありますが、ポジティブな評価につながる回答には共通点は多いのです。

「就活の答え」での自己PRや面接対策、面接の質問:個別解答では、深堀質問にも対応できる、考え方とそれに基づく回答例文を掲載しています。

是非参考にして、面接選考を勝ち抜きましょう。

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