就活初期にできるだけ幅広い業界・業種を理解するために、業界研究コンテンツを作りました。何故それが大事かに関しては以下の記事を参考にしてください。
通信業界情報の7つのポイントを押さえよう
- 通信業界のビジネスモデルを理解しよう
- 通信業界の現状と課題・未来
- 通信業界にはどんな仕事があるのか、職種の情報
- 通信業界に働く人のモチベ―ション、「やりがい」は何か
- 通信業界に向く人、向かない人はどういう人か
- 通信業界の構造
- 通信業界、主要各社の概況
この記事では、通信業界、特に通信キャリアの現在と直面する課題から、近未来までを俯瞰して分析しています。就活の対象として通信業界を選ぶかどうか、自分の将来を賭けてみるべきかの参考にしてください。
Table of Contents
通信サービス市場
現在の通信サービス市場をざっくり理解するために、移動系、固定系、法人向けネットワークに分けて考えてみましょう。
そして個人や法人に対して小売する市場と、通信業者に対して卸売りをする市場があります。通信の内容としては音声通信とデータ通信に分けて分類します。
通信事業は国の規制下にあるビジネスです。例えば固定系の通信サービスでは、音声通信は全国を東と西に分けていたり、データ通信の固定系ブロードバンド市場は、北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄と全国を9ブロックに分かれています。
これはこの業界を規制、監督する総務省=国の政策、許認可によるものです。
移動体系の市場は全国であり、分割されていません。ただし、使用周波数帯は国が厳しくコントロールしており、特にMNO(Mobile Network Operator (モバイル・ネットワーク・オペレーター)、読み方は「エム・エヌ・オー」と呼ばれる移動体通信事業者は数社しかありません。
MNO企業は携帯電話等のモバイル用の回線網を所有しており、自社ブランドで通信サービスを提供している会社と考えてください。
現状ではNTTドコモ、ソフトバンク、KDDIであり、最近では楽天が4番目のキャリアとして参入が認められています。
移動系通信サービスの現状と課題
高い普及率
2020年8月に総務省がまとめた「電気通信事業分野における市場検証(令和元年度)年次レポート」によると、2019 年度末時点における移動系通信の契約数は、1億 8,661 万(前期比+1.0%、前年度末比+3.4%:携帯電話は1億8,480万、PHS、BWA(Broadband Wireless Accessの略、代表的なものはWiMAX)の単純合算では2億 5,772 万)と増加しています。
携帯電話の契約数をを日本の総人口1億2709万4745人(2015年国勢調査)と比較すると、すでに145.4%の普及率となっています。
しかもこの数字は全人口に対して比率なので、乳幼児、未就学児、高齢者も含まれているため、実需要ベースで言うと既に非常に高い普及率であることが分かります。
横ばいが続く移動体系通信全体の売上高
2019 年度の移動系通信全体の売上高は6兆 7,485 億円(前年度比+1.2%)であり、横ばい傾向が2014年度から続いています。
売上高の推移は2014年度:6兆2940億円、2015年度:6兆3837億円、2016年度:6兆4119億円、2017年度:6兆6939億円、2018年度:6兆6665億円、となっています。
つまり、6年間で市場の成長は4.500億円であり、皆さんが抱いているイメージ程伸びていないのではないでしょうか。
MNO 各社のARPU(1ユーザーあたりの平均的売り上げを示す指標でAverage Revenue Per Userの略)をみると2013年から2017年の5年間では、微増、微減を繰り返して、概ね月額4,500円前後の水準で横ばい傾向が続いています。
市場規模は非常に大きいですが、各社間の厳しい競争、格安スマホ(MVNO)の登場や、使用料の割引プランの拡充などの影響で、利用者の料金に対する見方は昔より敏感になっています。
更に政府は携帯料金の家計負担をめぐり、現在の1世帯当たりの携帯料金は、平均毎月10,508円(2018年:二人以上世帯)に達しています。
政府(菅政権)は携帯料金を大幅に引き下げたいという意向を示し、2021年春から携帯電話各社もそれに対応しています。
今後ARPUが上がっていくことはなかなか考え難いというのが現状です。
新たなビジネスモデル
国内市場に関しては、現状の移動系通信サービスのビジネスモデルでは成長の限界が見えています。もちろん移動体通信市場規模は巨大であり、移動体通信量(特にデータ通信量)そのものは今後も増えていくことが見込まれるため悲観する必要はありません。
現状のモデルのみでは成長は難しいという意味は、変化に対応した新しいモデルでビジネスを展開できれば未来は明るいという意味でもあります。
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固定系データ通信市場の現状と課題
契約数の傾向
総務省のデータによれば、2017年度末時点における固定系ブロードバンドサービスの契約数は、4,120万(前期比+0.5%、前年度末比+2.4%)と増加傾向となっています。
そのうち、FTTH(FTTHとは、Fiber to the Homeの略。 通信事業者の設備からユーザーの自宅や事務所までを光ファイバーケーブルでつなぐアクセス方式)の契約数は、3,309万(前期比+1.1%、前年度末比+4.5%)と増加傾向にあり、固定系ブロードバンド契約数全体に占める割合は、80.3%(前期比+0.4ポイント、前年度末比+1.6ポイント)という現状です。固定系ブロードバンドの契約数の伸び率は過去6年、毎年約2.5%前後の伸び率なので、微増傾向が継続しています。
売上高の傾向
固定系ブロードバンド市場の売上高については、2019年度は1兆7,236億円(前年度比+0.7%)という結果でした。2014年度に1兆7052億に達しているため、過去6年間微増微減を繰り返して、ほとんど成長していないことが分かります。
2017年度末時点における固定系ブロードバンド市場の主力事業者別シェアは、NTT東西が20.0%、KDDIが17.7%、オプテージが3.8%、ソフトバンクが2.2%、という状況です。
超高速接続を可能にする光ファイバー回線の設備シェアはNTT東西が圧倒的に高く、75.2%を占めています。残りをKDDI、電力系会社、CATV企業で分けている現状です。
NTT東西の光ファイバー回線については、電気通信事業法によって競争事業者への貸出義務が課されています。
2019 年度末時点における FTTH の契約数(3,309 万)のうち、卸電気通信役務を利用して提供される契約数(以下「卸契約数」という。)は、1,694 万(前期比+31 万、前年同期比+138 万:全契約数割合51.2%)、このうち、サービス卸の契約数は、NTT 東西合計で 1,389 万(前期比+26 万、前年同期比+120 万:全契約数割合42.0% )という状況です。
現在FTTHを利用している世帯の光回線使用料の月額平均は、インターネット接続サービスを含んで平均5000円前後:戸建て向けの場合)となっています。
ISP市場
2019年度末時点における ISP(固定系)市場の契約数(契約数5万以上の ISP の「固定系インターネット接続サービス」契約数)は、4,183 万(前期比+0.3%、前年度末比+1.5%)で微増という状況です。
また、契約数が5万契約以上の事業者数は、53社あり、インターネット接続サービス企業は非常に多くあります。
事業者別のシェアはNTT系:25.2%、KDDI系:31.6%、ソフトバンク系:13.2%、ベンダー系12.5%、電力系5.9%、CATV系3.3%、その他8.2%という状況です。
ISP市場の売上高(インターネット接続事業等)は、2017年度において8,481億円(前年度比+2.5%)となっており、過去7年間微減したり、微増しているため2017年度の売上は2011年度(8487億)とほとんど変わらず横ばい状況が継続しています。
固定系音声通信市場
固定電話契約数の状況
2019年度末時点における固定電話の契約数は、5,367万(前期比-0.4%、前年度末比-1.4%)となっています。契約数の推移をみると全体では毎年微減が続いています。
固定電話の内訳では、OABJ-IP電話*、NTT東西加入電話、直収電話**、CATV電話に分かれていて、0ABJ-IP電話は3,521万(前期比+0.4%、前年度末比+2.2%)と増加しているものの、0ABJ-IP電話以外の契約数は1,846万(前期比-2.0%、前年度末比-7.5%)、NTT東西加入電話は1,939万(前期比-2.0%、前年度末比-7.7%)と大幅な減少傾向です。
- *OABJ-IP電話とは、「03」「06」などで始まる、一般の加入電話に割り当てられる電話番号が割り振られたIP電話の事です。IP電話とは、通話の伝送の一部または全部でIPネットワークを利用している電話サービスです。OABJ-IP電話はIP電話ですが、通話品質は固定電話並みであり、市外局番も(=電話の場所)が固定されているので、圏外になることはなく社会的な信用力があります。
- **直収電話とは通信事業者がNTT東日本やNTT西日本の回線を介さずに提供している固定電話サービスのことです。
固定電話の売上高の状況
固定電話市場における売上高は、2017年度末時点で1兆4,670億円(前年度末比-2.2%)となっており、年々売上高の減少が継続しています。
固定電話市場シェア
2019年度末時点における固定電話市場の事業者別シェアは、NTT東西が66.0%(前年度末比-0.3ポイント)、KDDIが21.8%(同+0ポイント)、ソフトバンクが5.9%(同+0.1ポイント)となっています。
シェアの推移ではかつてはNTT東西でほぼ100%のシェアを2分していましたが、最近では特にKDDIがそのシェアを奪っている傾向が続いています。
法人向けネットワーク市場
2019年度末時点におけるWAN*サービス市場(IP-VPN**、広域イーサネット***、フレッツVPNワイド****等)の合計契約数は、169万(前年度末比+3.3%)となっており、成長が続いています。サービス別の契約数の推移をみても、どのサービスも伸びていて全体的に増加傾向が続いています。
- *WANとはWide Area Network(ワイド・エリア・ネットワークの略)で、広い範囲(市街地を越え郊外、県外や国際の範囲)におよぶネットワークを意味します
- **IP-VAN: Internet Protocol–Virtual Private Network電気通信事業者の IP 網を用いて企業の拠点間通信ネットワークを構築するもの。インターネットを経由しないため、インターネット VPN よりも機密性や信頼性に優れているネットワークです
- ***広域イーサネット:企業 LAN などで利用されているイーサネット方式を使い、地理的に離れた拠点の LAN 同士をつないで企業通信ネットワークを構築するもの。IP 以外のプロトコルを利用できる
- ****NTT東西が供給するフレッツVPNワイド:フレッツ 光ネクスト、Bフレッツ、フレッツ・ADSL、フレッツ・ISDNを組み合わせて安価・簡易にプライベートネットワークの構築が可能となるIP-VPNサービス
WANサービスの市場シェア
2019 年度末時点における WAN サービス市場の事業者別シェアは、NTT 東西が 36.7%、NTT コミュニケーションズが 19.8%、KDDI が 14.4%、ソフトバンクが 13.4%、電力系事業者が6.3%という状況でした。
NTT 系事業者のシェアの合計をみると、62.7%となっています。また3グループ(NTT 系事業者、KDDI 及びソフトバンク )のシェアの合計は、90.63%となっており、典型的な寡占市場になっており、シェアの割合も横ばいが継続しています。
通信業界の共通の課題
以上駆け足で通信業界を市場別にみてきましたが、市場規模は巨大ですが成長のペースは微増か横ばい、市場によってはマイナスであり成長の限界が見えているという点です。
特に国内市場では、人口減少が既に起こっており、総世帯数の減少もはじまりつつあります。契約数を伸ばて、1ユーザー当たりの収益を乗じるというモデルは成長の限界に直面するでしょう。
もちろん今まで通りのビジネスモデルを続ける中で、競争に勝ちシェアを伸ばすという戦略はあります。
また現在既に行われているように、動画や音楽、ゲームなどのエンターテイメントコンテンツの配信による課金や、金融・決済サービスの事業化、通販や物販などの生活関連、ECサービスや教育サービスなどの、通信と親和性のある事業を行う、他社と協業する、出資するなどの戦略もあります。
これらの2つの方向性は現状の延長線上にある戦略です。
通信業界はデータ技術、インターネット技術と共にデジタル技術の先端を走っている業界であるため、その未来の姿も大きく変わっていく可能性があります。また変わらなければ成長はできない業界とも言えます。そのカギはデジタルによるイノベーションです。
近未来の通信業界
5Gとデジタル新技術が拡げる世界
まず通信業界を目指す就活生の皆さんにも必ず理解して欲しいワードが「5G」です。GはGeneration の略で、モバイルネットワークの第5世代の通信技術を意味します。
ちなみにアナログ無線技術のモバイルネットワークが1G、デジタル無線による携帯電話システムが2G、ITU(国際電気通信連合)が世界統一規格として標準化を進めたのが3G、3Gをベースに更に高速化に対応したスマートフォンのためのモバイルネットワーク技術(「LTE」(Long Term Evolution」と呼ばれる高速技術)が4Gです。
そして「2020年代の社会を支えるモバイルネットワーク」と位置づけで開発が進められているのが5Gという位置づけになります。5Gの位置づけは、スマートフォンだけではなく、インターネットワークにつながる全ての機器をモバイルでつなぐこと、つまりIoT社会を支える環境を実現する技術と考えて下さい。
具体的には今のモバイルネットワークで使われていない高い周波数帯域を使って、これまで実現できていない10Gbpsクラスの超高速無線通信を、数万台クラスの多数の端末が密集している場所でも安定的に通信させる新しい技術となります。
更に多数の基地局を限られたエリアに設置して運用するため、基地局側の消費電力をWi-Fiアクセスポイント並みの10W程度にしたいという通信の効率化も求められています。
例えばスポーツスタジアムに集まった大観衆が、自分のスマートフォンで選手の表情のアップや決定的な瞬間を高精細の映像で再現しながらライブを楽しむ、あるいは自分の見たい会場に設置されたカメラをセレクトしてライブと合わせて手元映像を楽しむなどの利用方法が考えられます。
またIoTという視点では、各端末がデータを自動的にアップロードし続け、AIがそのデータをリアルタイムで分析してセンターが機械をコントロールするという人を介さないデータ通信やリモートコントルールも可能になります。
5Gの技術はクルマの自動運転技術に応用され、多くのクルマから自動的にデータがアップロードされて、その解析の結果が人とクルマにフィードバックされ自動運転をサポートするという世界も実現していくでしょう。AIを搭載したロボットが自動化されたデータによってどんどん学習し、人より賢くなっていくというSFに描かれた世界も直近くにきています。
このようなに5G、IoT、AI、ロボットなどの革新的な技術は社会を一変し、既存のビジネスを破壊するチカラを持っています。通信業界、大手キャリア企業だけで実現する世界ではないため、各分野のエキスパート達との価値の協創が必要不可欠です。
ソフトバンク創業者の孫正義氏はまさに、未来をみて大胆な事業投資を行っています。それを調べれば、通信業界の未来に思いを馳せることもできるでしょう。むしろこれからは「通信業界」「通信キャリア」としてこの業界を考えない方が良いかもしれません。
移動体通信技術は5Gから6G、さらに7Gへと進化していきます。
データ通信量はこれからも爆発的に増えていくことが予測されているため、新しい時代には新しいビジネスモデルが必要になるでしょう。通信業界を目指す皆さんは固定的な概念はむしろマイナスになると考え、新しいことにチャレンジする気概をもって、企業研究をすすめていきましょう。
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